藤氏家伝(読み)とうしかでん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「藤氏家伝」の意味・わかりやすい解説

藤氏家伝
とうしかでん

藤原鎌足(かまたり)の伝記「大織冠(たいしょくかん)伝」と藤原武智麻呂(むちまろ)の伝記「武智麻呂伝」とからなる上下二巻の書物。単に『家伝』ともいわれ、上巻藤原仲麻呂(なかまろ)、下巻華厳(けごん)宗の学僧で仲麻呂に仕えていたらしい延慶(えんけい)の著述。760年(天平宝字4)正月から4月までの間に成立。上巻は「内大臣、諱(いみな)ハ鎌足、字(あざな)ハ仲郎(ちゅうろう)、大倭(やまと)国高市郡ノ人ナリ。其ノ先ハ天児屋根命(あめのこやねのみこと)ヨリ出ヅ」に始まり、「二子貞恵(じょうえ)、史(ふひと)有り、倶(とも)ニ別ニ伝有リ」に終わり、鎌足の伝記の側面を知るのに貴重な文献。「別ニ伝有リ」とある史(不比等(ふひと))の伝は残っていないが、貞恵(慧)の伝記は「貞慧伝」として上巻末に付載されている本もある。下巻は「藤原左大臣、諱ハ武智麻呂、左京ノ人ナリ。太政(だいじょう)大臣史ノ長子、其(そ)ノ母ハ宗我蔵大臣ノ女ナリ」に始まり、「其ノ人トナリ玉ノ如(ごと)シ」に終わる。『続日本紀(しょくにほんぎ)』には記載されていない経歴や事績がみえ、武智麻呂の人物像を探るのに重要な史料。『続々群書類従』『寧楽(なら)遺文所収

佐伯有清

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「藤氏家伝」の意味・わかりやすい解説

藤氏家伝
とうしかでん

大織冠伝』『家伝』ともいう。藤原氏先祖の伝記を扱ったもの。2巻。上巻に藤原鎌足とその子の僧貞慧の伝記,下巻に藤原不比等の子,武智麻呂の伝記を収録。奈良時代に成立。鎌足の伝記は,恵美押勝 (→藤原仲麻呂 ) の作。武智麻呂の伝記は奈良時代後期の僧延慶の作。貞慧の伝記は,押勝作とも大安寺僧作ともいわれるが不明。不比等やその子房前 (ふささき) ,宇合 (うまかい) ,麻呂らの伝記もあったのではないかと推測されている。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「藤氏家伝」の解説

藤氏家伝
とうしかでん

藤原氏の代表的人物の伝記。奈良・平安時代に作られた家伝の代表例。鎌足(かまたり)伝(大織冠伝)・武智麿(むちまろ)伝を「家伝」上下として「群書類従」に収める。上巻末に「貞恵・史(ふひと)とともに別に伝あり」とあり,貞恵伝は「続々群書類従」に収める。ほかに百川伝なども作られたらしい。鎌足伝・貞恵伝の撰者は藤原仲麻呂で,父祖顕彰の意図が著しい。武智麿伝の撰者は僧延慶(えんけい)。いずれも貴重な独自資料を含む。成立は760年(天平宝字4)頃か。「藤氏家伝 注釈と研究」に三伝の影印所収。

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改訂新版 世界大百科事典 「藤氏家伝」の意味・わかりやすい解説

藤氏家伝 (とうしかでん)

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