蟯虫症(読み)ぎょうちゅうしょう

内科学 第10版 「蟯虫症」の解説

蟯虫症(線虫症)

 蟯虫(Enterobius vermicularis)は先進国では最も多い線虫感染症である.汚染環境から直接経口感染するため,ヒト-ヒト感染が存在する.また肛門周囲の虫卵を自分で経口摂取する自家中毒も起きる場合がある.
 成虫は雌は8~13 mm,雄は2~5 mm大となり,成虫は2~3カ月生存する.虫卵は患者環境中に広がり,環境に付着した虫卵を経口摂取することで感染する.まれに虫卵が塵埃に混じり空気感染する場合もある.雌は夜間に肛門周囲に這い出して1万個以上を産卵して死亡する.
 寄生虫数が少ないと無症状である.虫体数が増えると下痢腹痛を合併し,肛門周囲の虫卵による肛門周囲瘙痒感,蟯虫による虫垂炎,虫体の侵入による腸管の潰瘍・腸管穿孔・腹膜炎,膀胱炎,幼児では不眠・発育不良,などの症状を合併する.
 検査はセロファンテープで肛門周囲の虫卵を付着させて鏡検する.虫卵は45~50 μmで一側が削がれたような柿の種状をしている. 蟯虫は容易に周囲に複数感染しているため,虫卵陽性者の治療のみでは不十分である.同居者やクラスメートなど一斉検査・一斉治療が重要である.①パモ酸ピランテル10 mg/kg(単回服用).保険適応有.②アルベンダゾール400 mg(単回服用).保険適応外.③メベンダゾール100 mg(単回服用).保険適応外.上記薬剤は2週後に再投与することで100%近く治癒することが可能となる. 虫卵は通常の環境で生存し長期にわたって感染能力を維持するため,環境の清掃も重要であるが,虫卵陽性者がトラウマにならないよう配慮することも必要である.[立川夏夫]
■文献
Farid Z, Patwardhan VN, et al: Parasitism and anemia. Am J Clin Nutr, 22: 498-503, 1969.
Stolk WA, de Vlas SJ, et al: Anti-Wolbachia treatment for lymphatic filariasis. Lancet, 365: 2067, 2005.

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家庭医学館 「蟯虫症」の解説

ぎょうちゅうしょう【蟯虫症 Oxyuriasis, Enterobiasis】

[どんな病気か]
 蟯虫の成熟卵が経口感染(けいこうかんせん)しておこる病気です。日本にも多くの感染者がいます。成虫は大腸(だいちょう)の回盲部(かいもうぶ)に寄生していますが、夜中の睡眠中に肛門(こうもん)からはい出して肛門周囲に産卵します。
 肛門にさわって虫卵のついた指をしゃぶったり、ほこりといっしょに虫卵を吸い込んだりして感染します。
[症状]
 腹痛などの消化器障害の症状がみられます。
 また、産卵時には肛門周囲にかゆみを生じるため、無意識にかいて皮膚炎をおこしたり、かゆみのために夜中に目が覚め睡眠不足になったりします。
 子どもの夜泣きの原因となることもあります。
[検査と診断]
 肛囲(こうい)検査法といい、接着テープで肛門周囲をぬぐい、テープに付着した虫卵が見つかれば診断がつきます。専用の蟯虫検査紙があります。
[治療]
 パモ酸ピランテルを内服すれば、ほぼ駆虫(くちゅう)できます。再感染が多いので、10日ほど後にもう一度、内服します。
 また、感染者がいるときには、学校や家庭などの同じ集団で生活している人も、同時に検査して治療する必要があります。
 なお、蟯虫は感染速度が速いため、感染者が見つかったら、必ず集団治療をする必要があります。
[予防]
 蟯虫卵は乾燥と高温に弱いので、ふとんなどの日光干しや衣類を清潔に保つこと、そして室内の清掃と手洗いの励行を心がけることが必要です。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「蟯虫症」の意味・わかりやすい解説

蟯虫症
ぎょうちゅうしょう

蟯虫」のページをご覧ください。

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