翻訳|armor
機甲部隊は,戦車部隊を中心とした装甲化された諸兵種連合の部隊をいうが,装甲化された歩兵を中心とした諸兵種連合の機械化部隊を含める場合もある。編成上,火力,機動力,防護力に優れ卓越した攻撃力を発揮し,現代の陸上戦闘の中核的存在である。
機甲部隊の中心となる戦車は,第1次世界大戦末期に塹壕(ざんごう)戦となり膠着(こうちやく)状態に陥った戦況打開のため,まずイギリス軍,次いでフランス,ドイツ軍によって開発された。榴弾(りゆうだん)の破片,機関銃弾を防ぐことができるものの低速かつ少量の初期の戦車は大きな威力を発揮しなかった。その後集団用法の採用,機動力の向上に努めた連合軍は戦車によって戦況の打開に成功した。第1次世界大戦後,イギリスのJ.F.C.フラー,B.リデル・ハートらは敵の指揮中枢を一挙に打撃して勝敗を決する機甲部隊の創設を提唱したが,現実にはドイツにおいてA.ヒトラーの支持を得たH.グデーリアンがこれを最初に建設した。第2次世界大戦においてこの機甲部隊が急降下爆撃機と連係して電撃戦を実施し成果をおさめた。第2次世界大戦の間,連合各国も機甲部隊の建設に努め,大戦後は核兵器に対する防護の必要性も認識されて先進国の陸軍のほとんどは機甲化または機械化された。
旧日本陸軍では歩兵万能の思想が強く,ドイツの電撃戦によってようやく機甲部隊の創設に着手したが,その力を発揮しないまま終戦となった。自衛隊においては第7師団(東千歳)を機甲部隊として保持している。
執筆者:村松 栄一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…なお,第2次大戦以降,半装軌式装甲車については新たに開発された例はない。
[機械化部隊と機甲部隊]
内燃機関を利用した自動車が実用化されるまでは,陸上部隊の戦場における移動や兵器資材等の輸送はもっぱら人や馬の力にたよっていた。第1次大戦以降,偵察,連絡,兵器資材輸送,後には兵員輸送等の軍事目的に自動車が使用されるようになり,また戦車や装甲車,さらに自走砲も出現して,軍の機械化,近代化が大いに進展した。…
…第2次大戦の初期,機甲部隊を主力とするドイツ軍が空軍の密接な協力のもと,機動力を発揮して短期間に敵を圧倒した作戦。機甲部隊とは,戦車部隊が戦闘力の主体となり,これに装甲人員輸送車または装甲歩兵戦闘車によって機械化された歩兵部隊,自走または牽引の砲兵部隊その他の部隊をもって編成された諸兵連合の車両化された部隊をいう。…
※「機甲部隊」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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