日本大百科全書(ニッポニカ) 「要指示医薬品」の意味・わかりやすい解説
要指示医薬品
ようしじいやくひん
薬事法(現、医薬品医療機器等法)の規定により医師、歯科医師、または獣医師から処方箋(せん)の交付もしくは指示を受けた者以外の者に対して販売、授与することを禁止した医薬品で、厚生労働大臣によって指定された。指定された医薬品には「要指示」または「注意――医師等の処方せん・指示により使用すること」の文字を容器または被包に表示しなければならないこととされていた。2002年(平成14)の薬事法一部改正により、要指示医薬品という区分は廃止され、かわるものとして「処方せん医薬品」が定められた。
要指示医薬品の指定理由としては、抗生物質など病原菌に耐性を生じやすいもの、経口糖尿病用剤のように血糖値が下がりすぎると危険で、定期的に血糖値を計りながら使用するもの、また喘息(ぜんそく)の薬のテオフィリンなどのように有効量と中毒量が近いため絶えず血中濃度を測定しながら投与しなければならないといった、使用期間中に医学的検査を受けなければ危険を生じやすいもの、副腎(ふくじん)皮質ホルモン剤や抗癌(がん)剤など薬理作用が強く重篤な副作用が発現しやすいもの、トランキライザーや放射性医薬品など使用方法がむずかしいもの、などがあげられる。
薬局で要指示医薬品を販売するときは「医師、歯科医師、または獣医師の処方せんまたは指示」を確認し、要指示医薬品を販売したことを記録し、その記録を2年間保存しなくてはならない、と定められていた。
[幸保文治]