相撲興行における行事の一つ。本場所が始まる初日の前日,行司が主宰する土俵祭が行われ,終了後〈呼出し〉が天びんにつるした太鼓をたたきながら土俵を3周した後,明日から相撲が始まることを告げるために市中に繰り出す。江戸時代には相撲興行を知らせる情報機関がないため,触太鼓の役目は重要で,また降雨のため中止になった後,再開を告げるときにも行われた。市中に出た呼出しは,各所を回り,明日から相撲興行があることと,初日の好取組の力士名を独特の節回しで触れ歩く。相撲場から出た本太鼓のほかに別動隊がいて,5組に分かれて市内を一巡する。現在の触太鼓は,東京では,下町は両国方面から日本橋,浅草,柳橋,吉原方面,厩橋から銀座方面,それに赤坂,山手方面とめぐるが,朝の10時から夕方の6時ごろまで各組が回って帰ってくる。近年は回る個所が減少する傾向にある。昔は,この触太鼓5個のうちの1個を櫓(やぐら)に上げたが,現在は櫓専用のものを使用している(櫓太鼓)。
執筆者:池田 雅雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…膜状の物質,主として動物の革を張りつめて弾力をもたせ,これを打って音を出す楽器の総称。原始時代から諸民族の中に深く浸透していた楽器の一種であり,最古のものは前約2500年,シュメールの浮彫に見られる。現在に至るまで多くの地域で呪術信仰と密接に結びついており,神聖視されていて,材料の選択や製作過程に厳格な掟をもつ地域もある。アフリカの民俗の中では,月・実り・母などの女性的象徴,太陽・再生などの男性的象徴となっているほか,一個の人格と同様に扱われて食物や犠(いけにえ)がささげられたり,悪霊払いにも広く用いられている。…
…次に関係者一同に神酒が回されて土俵祭が終わる。土俵祭が終わると控えていた呼出し連中が,西の花道から〈触(ふれ)太鼓〉をたたきながら2組入場し,土俵下を左回りに3周したうえ,市街に繰り出して,明日から相撲が始まることを触れ歩く。町へ出るのは2柄(がら)の太鼓であるが,途中に待機している5柄の太鼓は,それぞれの受持ちの区域に分かれて,夕暮れまで市中を触れ歩く。…
※「触太鼓」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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