認知症施策推進大綱(読み)にんちしょうしさくすいしんたいこう

知恵蔵の解説

認知症施策推進大綱

認知症の人の意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域のよい環境で自分らしく暮らし続けることができる社会の実現のために取りまとめられた、認知症対策の政府の方針。2019年6月18日に、内閣官房長官を議長、健康・医療戦略担当大臣及び厚生労働大臣を副議長、その他13大臣を構成員とする「認知症施策推進関係閣僚会議」で決定された。
認知症の人は、18年には500万人を超え、65歳以上の高齢者の約7人に1人が認知症と見込まれている。認知症は誰もがなりうるものであり、家族や身近な人が認知症になることなどを含め、多くの人にとって身近なものとなっている。
政府は、15年1月に「認知症施策推進総合戦略~認知症高齢者等にやさしい地域づくりに向けて~」(新オレンジプラン)を策定し、取り組みを進めてきた。今回更に、有識者や認知症の人、家族を始めとした様々な関係者からの意見を聴取し、「認知症の発症を遅らせ、認知症になっても希望を持って日常生活を過ごせる社会」を目指した具体的な施策を打ち立てた。
本大綱は、「共生」と「予防」を車の両輪として施策を推進していくことを基本的考え方としている。「共生」とは、認知症の人が、尊厳と希望を持って認知症と共に生きる、また認知症であってもなくても同じ社会で共に生きるという意味である。「予防」は、「認知症にならない」という意味ではなく、「認知症になるのを遅らせる」、「認知症になっても進行を穏やかにする」という意味で使用されている。
具体的な施策としては、(1)認知症サポーター養成などの「普及啓発・本人発信支援」、(2)認知症予防に資する可能性のある活動の推進など「予防」、(3)早期発見・早期対応のための医療体制の整備など「医療・ケア・介護サービス・介護者への支援」、(4)バリアフリーのまちづくりの推進など「認知症バリアフリーの推進・若年性認知症の人への支援・社会参加支援」、(5)認知症の予防法やケアに関する技術・サービス・機器等の検証、評価指標の確立など「研究開発・産業促進・国際展開」を五つの柱として掲げる。
この中で、認知症サポーター養成数を2020年度に1200万人にする、広報紙やホームページ等により、認知症に関する相談窓口の周知を行っている市町村を100%にする、介護予防に資する通い場への参加率を8%程度に高める、市町村における「認知症ケアパス」作成率を100%にする、といった目標の具体的数値も挙げている。
こうした取り組みの結果として、認知症の人が住み慣れた地域で尊厳が守られ、自分らしく暮らし続けることができる社会を目指す。加えて、認知症の予防に関するエビデンスを収集・普及し、取り組みを促すことで、70歳代での発症を10年間で1歳遅らせることを目指すとしている。これは、70歳代の認知症の有病率(ある時点における病気をしている人の、人口に対する割合)を10年間で10%引き下げることを意味する。
本大綱の対象期間は、団塊の世代が75歳以上となる2025年まで。策定後3年をめどに、施策の進捗(しんちょく)を確認するとしている。

(星野美穂 フリーライター/2019年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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