電解コンデンサー(読み)でんかいこんでんさー(英語表記)electrolytic condenser

日本大百科全書(ニッポニカ) 「電解コンデンサー」の意味・わかりやすい解説

電解コンデンサー
でんかいこんでんさー
electrolytic condenser

金属箔(はく)の表面に電解酸化皮膜をつくり、金属箔を陽極、酸化皮膜を誘電体、電解液を陰極としたコンデンサー総称。極性が生ずるので、原則として直流でしか使用できない。主として電子回路用電源の平滑回路とか、バイアスを加える場合に直流電圧に残っている脈流を取り去るために用いられる。代表例として、もっとも古くかつ現在でも主力をなしているアルミニウム湿式電解コンデンサーについて説明する。この場合、高純度のアルミニウム箔を直接使用するか、または有効面積を大にするために塩酸エッチングを施し、ホウ酸アンモニウム液中にて箔を陽極にして電解する。この操作により表面に誘電体皮膜(γ-Al2O3)の活性層ができる。これを化成と称している。こうして得られたものと、ペースト状の充填(じゅうてん)用電解液と陰極箔を貼(は)り合わせて巻込み形コンデンサーを構成する。ペーストはホウ酸アンモニウムのグリセリン溶液で粘液状であり、このペーストが実質的に負の電極となる。誘電体層の厚みがきわめて薄いので、小型・大容量の点では他のコンデンサーの追随を許さないが、酸化皮膜と直列に電解液の抵抗が入ってくるので一般に損失は相当に大きい。また、漏れ電流も他のコンデンサーに比べて大きいが、安価である。使用電圧は普通450ボルト以下であり、安全性を考えて化成電圧の70~80%程度とされている。

 使用温度範囲はマイナス40℃からプラス85℃、静電容量は1ファラド~1万マイクロファラド程度である。アルミニウムのほかにタンタルを使用した焼結形電解コンデンサーがある。この場合はタンタルの粉末圧縮成形し、真空焼結をして表面積を増し陽極をつくる。そのあと表面に二酸化マンガンの層をつくり、さらにグラファイトを充填して陰極とする。これは電気的特性が安定で、寿命も長く、小型にもなる長所を備えているが高価である。

[坂田好一郎]


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