銀行がその金庫室に備えつけた多数のキャビネットのうち特定のものを取引先に貸し渡し,取引先は自由にこれを開閉してその中に目的物件(貴金属,有価証券など)を格納するものである。明治初年ころから事実上行われた。保護預りの一種であり,普通銀行(相互銀行を含む)の付随業務である。取引先は当該キャビネットの鍵を銀行から交付され,これを保管しているが,キャビネットは二重に施錠されているので,取引先は銀行から交付されたキーと銀行の保有するマスターキーを合わせて使用することによって初めて開扉することができる。貸金庫の法律的性質は賃貸借契約であるというのが現在では通説である。
類似のものに夜間金庫があるが,これは,銀行と取引先との契約によって,銀行の本人の当座勘定,普通預金その他の預金への入金のために,営業時間外に使用することができるものである。その利便のために商店街の商人の利用が多い。週休2日制の普及などもあって増加傾向にあるが,それに伴い事故やトラブルも絶えず,防犯対策が課題である。
執筆者:後藤 新一
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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