(読み)シン

デジタル大辞泉 「賑」の意味・読み・例文・類語

しん【賑】[漢字項目]

人名用漢字] [音]シン(呉)(漢) [訓]にぎわう にぎわす にぎやか
にぎわう。「殷賑いんしん
金品を施し与える。にぎわす。「賑給賑恤しんじゅつ
[名のり]とみ・とも

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精選版 日本国語大辞典 「賑」の意味・読み・例文・類語

にぎ‐わ・う ‥はふ【賑】

[1] 〘自ワ五(ハ四)〙
① 富み栄える。豊かになる。繁栄する。
書紀(720)反正元年一〇月(図書寮本訓)「人民(おほむたから)(と)み饒(ニキハヒ)天の下太平(たいら)かなり」
② にぎやかになる。繁盛する。盛んになる。活気に満ち花やかになる。
※書紀(720)崇神七年一一月(北野本訓)「五穀(いつつのたなつもの)(すて)に成(な)りて百姓(をほむたから)饒之(ニキワヒ)ぬ」
※宇治拾遺(1221頃)二「そのあたりには、小家どもおほく出きて、里もにぎはひにけり」
[2] 〘他ハ下二〙 =にぎわす(賑)
※書紀(720)斉明四年七月(北野本訓)「饗(あへ)(たま)ひて贍(ニキハヘ)たまふ。常より加(まさ)れること有」

にぎわわにぎははし【賑】

〘形シク〙 (「にぎわう(賑)」の形容詞化)
① 富み栄えている。豊かである。裕福である。時めいている。〔享和本新撰字鏡(898‐901頃)〕
※宇治拾遺(1221頃)一「五位は馬よりおりて、家のさまを見るに、にぎははしくめでたきこと、物にもにず」
② にぎやかである。明るく陽気である。花やかである。
※宇津保(970‐999頃)蔵開上「声いとほこりかににきははしきものから、又あはれにすごし」
※とりかへばや(12C後)上「えびぞめのおりもののうちぎ、あはひにぎははしからぬをきなし給へる」
③ 物の多いさま。
源氏(1001‐14頃)初音「硯のあたり、にぎははしく草子ども取り散らしけるを」
にぎわわし‐げ
〘形動〙
にぎわわし‐さ
〘名〙

にぎわし・い にぎはしい【賑】

〘形口〙 にぎはし 〘形シク〙 繁盛している。にぎやかである。〔色葉字類抄(1177‐81)〕
人情本春色梅児誉美(1832‐33)初「唐琴屋とか聞えしは、いと賑(ニギ)はしき家なりしが、主夫婦死去(みまがり)て」
にぎわし‐げ
〘形動〙
にぎわし‐さ
〘名〙

にぎわ・す にぎはす【賑】

〘他サ五(四)〙
① ほどこして豊かにする。裕福にする。富ませる。
※文明本節用集(室町中)「贍 ニギワス。賙 同」
※中華若木詩抄(1520頃)下「天下貧民などを、にぎはしてこそ、よからんずるに」
② にぎやかにする。また、いっぱいにする。
甲陽軍鑑(17C初)品一二「百姓をのだて、郷を賑(ニギハ)し」
社会百面相(1902)〈内田魯庵学生十円取れたら大いに諸君胃腑を賑はしてやる」

にぎ‐わい ‥はひ【賑】

〘名〙 富むこと。豊かになること。また、にぎやかであること。にぎあい。
※書紀(720)継体元年三月(前田本訓)「農績(なりはひをうむ)ことを廃棄て殷富(ニキハヒ)に至る者か」
浮世草子・新色五巻書(1698)一「世を宇治俵の茶作とて、此一村のにぎわい」

にぎやかし【賑】

〘名〙 (動詞「にぎやかす(賑)」の連用形名詞化) にぎわすこと。賑やかにするため加えるもの。賑わい。
滑稽本浮世床(1813‐23)初「どうでまたこちとらが世話アすれば迚も、釜の下の賑(ニギヤカ)しにゃあなるめえす」

にぎお・う にぎほふ【賑】

〘他ハ下二〙 にぎやかにする。にぎわう。
※書紀(720)持統五年正月(北野本訓)「正広肆百済の王、余禅広、直大肆遠宝良虞南典とに優賜(ニキホヘたま)ふこと、各差有り」

にぎあ・う にぎあふ【賑】

〘自ハ四〙 =にぎわう(賑)(一)
※虎明本狂言・鍋八撥(室町末‐近世初)「たかきやにのぼりてみればけぶりたつ、たみのかまどはにぎあひにけり」

にぎやか・す【賑】

〘他サ四〙 にぎやかにする。陽気に景気をつける。
※俳諧・乙二七部集‐附録(1830‐44)上「切風巾や枯木の中をにきやかす〈一楼〉」

にぎわし にぎはし【賑】

〘名〙 (動詞「にぎわす(賑)」の連用形の名詞化) にぎわすこと。にぎやかにすること。

にぎわわ・す にぎははす【賑】

〘他サ五(四)〙 =にぎわす(賑)

にぎわにぎはし【賑】

〘形シク〙 ⇒にぎわしい(賑)

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