贖宥状(読み)しょくゆうじょう(その他表記)indulgence

翻訳|indulgence

日本大百科全書(ニッポニカ) 「贖宥状」の意味・わかりやすい解説

贖宥状
しょくゆうじょう
indulgence

贖宥証書。贖宥とは、カトリック教義で、信徒が果たすべき罪の償いを、教会に蓄えられたキリストと諸聖人の功徳分与により、赦免すること。免罪符ともいわれる。中世末以来、教皇財政をまかなうため、これを信徒に買わせる慣行が生まれた。ルターが、真の悔い改めと、キリストのみを救主と仰ぐ信仰から、贖宥に批判を加えた「九十五か条の論題」が宗教改革口火となった。

[成瀬 治]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

旺文社世界史事典 三訂版 「贖宥状」の解説

贖宥状
しょくゆうじょう
indulgence

カトリック教会功績のある者に対し,その罪への現世的な処罰を免除するために発行した証書。免罪符とも呼ばれる
カトリック教会では,罪の償いとして祈禱 (きとう) ・巡礼・施し,教会への寄進などが求められたが,十字軍時代,従軍する代わりに教皇指定の聖堂への参詣と寄進をした者に交付したのが起源。ルネサンス時代にローマ教皇の下に聖堂建築が盛んに行われると,その費用を得るための贖宥状販売がフッガー家と組んで公然と行われ,識者の憤激を買い,ルターによる宗教改革の発端となった。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「贖宥状」の解説

贖宥状(しょくゆうじょう)
indulgence[英],Ablaßbrief[ドイツ]

免罪符(めんざいふ)ともいう。教会に特別の功績あるものに対し,彼がおかした罪への現世的処罰を免除する証書。中世末には教皇庁財政をまかなう手段として乱用され,その根底にある功績思想がルター宗教改革の契機となった。

出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「贖宥状」の意味・わかりやすい解説

贖宥状
しょくゆうじょう

免罪符」のページをご覧ください。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の贖宥状の言及

【九十五ヵ条提題】より

…贖宥は,本来,地上におけるキリストの代理としての教皇が,教会に対する信徒の特別な功労にもとづき,その犯した罪のつぐない(教会的刑罰)を赦免する慣行であった。ルターは,修道生活の中で,ひとの救いは善行によらず,もっぱら神の恵みへの信仰によることを確信していたので,当時ドイツで販売されていた贖宥状が,信徒を真の悔改めと唯一の救主キリストへの信仰から引き離すことをおそれ,贖宥問題をめぐる討論会のために,95の論題を公表したのである。しかし,ラテン語で書かれていたこの九十五ヵ条は,たちまち何者かの手でドイツ語に訳されて各地に広まり,大反響を生むこととなった。…

【聖職売買】より

…サマリア人シモン・マグスが使徒ペテロとヨハネに対して,金銭を提供することによって聖霊の降下を依頼したという《使徒行伝》(8:18~24)の故事にちなみ,ラテン語ではシモニアSimoniaと言う。シモニアとは本来,霊的な事がらや神聖な事がらを金銭その他の手段によって獲得することを意味し,贖宥(しよくゆう)状(免罪符)取引なども含められていたが,一般的には教会や修道院の聖職を売買する行為をさす。ゲルマン的私有教会制のもとでは,国王は自己支配下の教会・修道院の聖職者を自ら任命し,それに対する対価を求めていた。…

【免罪符】より

…中世末から近世初期のローマ・カトリック教会で,信徒がこれを購入することによって,自己の犯した罪の償いを免除されると信じられた,教皇が発行する証書。贖宥(しよくゆう)状,贖宥符とも訳される。これがもたらす信仰上の弊害をルターが〈九十五ヵ条提題〉で攻撃したことが,宗教改革の口火となった。…

※「贖宥状」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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