赦免地踊(読み)しゃめんちおどり

改訂新版 世界大百科事典 「赦免地踊」の意味・わかりやすい解説

赦免地踊 (しゃめんちおどり)

民俗芸能。京都市左京区八瀬(やせ)の天満宮摂社,秋元神社例祭(10月11日)に奉納される風流(ふりゆう)踊で,灯籠踊ともいう。灯籠を頭にのせ灯籠着(とろぎ)と呼ぶ女装をした青年8人を中心に,音頭取り,太鼓打ち,新発意(しんぼち)(踊りの指導者),踊り子が〈道歌(みちうた)〉をうたいながら神社に練り込む。境内に設けられた櫓(やぐら)のまわりを灯籠着がまわり,仮屋の舞台では(にわか)の〈盃事〉があり,〈汐汲踊〉〈茶摘踊〉〈御所の踊〉〈狩場踊〉等の踊りとにわかがほぼ交互に演じられる。

 赦免地は年貢諸役免除の地のことで,比叡山との境界争いののち,1710年(宝永7)老中秋元喬知の裁許により,八瀬は一村あげて禁裏御料として赦免地となった。村民報恩のため秋元神社を建立して踊りを献じたのがこの芸能の始まりという。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「赦免地踊」の意味・わかりやすい解説

赦免地踊
しゃめんちおどり

小歌踊の一種。京都市の秋元(あきもと)神社(左京区八瀬(やせ)秋元町)の10月の祭りに踊られる(スポーツの前日)。赦免地踊の名は、後醍醐(ごだいご)天皇が比叡山(ひえいざん)潜幸のおり、当地の八瀬童子が尽力した功により地租所役免除の恩典を受け、その慣習が続いていたところ、1707年(宝永4)に至って叡山との間に争いがおこり免租の特権を失おうとしたのを老中秋元但馬守喬知(たじまのかみたかとも)(1649―1714)の裁断で救われ、そのお礼の意味で秋元神社を建立し踊りを献じたことに由来するという。八瀬4か町内の青年がつくった透(すかし)彫り絵模様の切子灯籠(きりことうろう)8個に夕刻火を入れ、女装した少年が頭にこれをいただき境内に練り込む。これに花笠(はながさ)、振袖(ふりそで)、手甲脚絆(てっこうきゃはん)の少女10人ばかりが提灯(ちょうちん)を持ち従う。境内の仮舞台で少女たちが「汐汲(しおくみ)踊」「花摘(はなつみ)踊」「津島踊」の3曲を音頭取りの拍子木にあわせて踊り、1曲すむごとに境内に灯籠を回す。以前は「御所の踊」「白糸」「忍び踊」「茶摘踊」なども踊られた。

[萩原秀三郎]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「赦免地踊」の意味・わかりやすい解説

赦免地踊
しゃめんちおどり

民俗舞踊。「灯籠踊」ともいう。京都市左京区八瀬秋元町の秋元神社で 10月 10日 (もとは 11日) の例祭に行われる小歌踊。八瀬は旧来年貢免除の地であったが,江戸時代にその特権を失おうとしたとき,秋元但馬守の裁断で赦免された。この恩に報じるため但馬守の死後氏神の境内に祠 (ほこら) を建て祭日に踊りを奉納するようになったので,この名がつけられた。精巧な細工を施した火入りの灯籠を頭に載せて女装した少年8人と,花笠をつけた少女 10人が音頭取りの歌につれて踊る。振りは比較的新しいが,詞章は道歌,汐汲踊,花摘踊,忍び踊などの古歌を伝えている。

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世界大百科事典(旧版)内の赦免地踊の言及

【灯籠踊】より

…のちに著名となったのは京都洛北の灯籠踊で,岩倉,花園,高野などでは江戸時代も盛んであった。現在も京都市左京区八瀬の〈赦免地(しやめんち)踊〉,久多の〈花笠踊〉などに残るほか,岩手県の大念仏剣舞(だいねんぶつけんばい)(剣舞(けんばい))などに古い姿を残す。熊本県山鹿市の山鹿(やまが)灯籠踊もその一つであるが,民謡の《よへほ節》にあわせた盆踊となっている。…

【風流踊】より

…伝承にあたっては,中世の郷を単位として踊る所も多く,数ヵ所が集まったり,交代で演じたりする所もある。京都市左京区八瀬の〈赦免地踊(しやめんちおどり)〉,同じく久多の〈花笠踊〉,三重県伊賀町山畑の〈かんこ踊〉,滋賀県甲賀町油日神社の太鼓踊,兵庫県養父郡大屋町大杉の〈ざんざか踊〉,愛知県新城市大海の〈放下〉,山口県熊毛郡熊毛町八代の〈花笠踊〉,広島県山県郡千代田町本地の〈花笠踊〉,香川県仲多度郡仲南町佐文(さぶみ)の〈綾子踊(あやこおどり)〉(国指定重要無形民俗文化財),徳島県三好郡西祖谷山村の〈神代踊(じんだいおどり)〉(国指定重要無形民俗文化財),鹿児島県西之表市種子島の〈大踊〉などその数は多く,芸態も多様である。なお,歌舞伎の祖といわれる出雲お国が始めた踊りや,若衆かぶきの踊りも,風流踊を舞台化したものといわれる。…

※「赦免地踊」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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