安定な泡を形成させるため,溶液または原料に添加するもの。起泡剤には製作過程でガスを発生させることにより発泡させるいわゆる発泡剤(気泡剤)をも含むことがあるが,一般には両者は区別して用いられる。溶液系の起泡剤は界面活性剤の一種である。泡の生成は液体の表面が拡大することであるから,溶液の表面張力を低下させる起泡力と,その泡が安定であるように保持する泡安定性をもたなければならない。起泡剤としては卵白,サポニン,ゼラチンや界面活性剤としてセッケン,アルキル硫酸塩等が用いられるが,界面活性とともに,強靱な吸着分子膜を形成させるために直鎖構造でやや親水性に富むものが選ばれる。また泡の安定性を高めるために一般に泡安定剤を併用する。泡安定剤としてはアミド酸,ヒドロキシアンモニウム塩,アルキルアミンのエチレンオキシド付加物,スルホキシド,マレイン酸誘導体縮合物,脂肪酸多価アルコールエステルなどが用いられ,とくにアミド類が多用される。起泡剤はセッケン,洗剤にも配合される。また鉱業用としては浮遊選鉱の浮選剤として用いられ,この目的のためには,各種植物精油(パイン油,ユーカリ油,ショウノウ油),クレゾール酸,高級アルコール,ポリプロピレングリコールなどが利用される。泡沫(ほうまつ)消火剤(水系)の場合は泡の熱安定性,難燃性が重要で,ケラチン,アルブミンのようなタンパク質とともに,フッ素系界面活性剤が用いられる。
発泡剤としてプラスチック,コンクリートなどの成形時に添加するものの多くは,加熱時に窒素,二酸化炭素,アンモニア,水蒸気,酸素,水素等を発生するものである。発泡ゴム,発泡プラスチックには炭酸水素ナトリウム,炭酸アンモニウム,酢酸アミル,ジアゾアミノベンゼンなどが,また泡ガラスには炭酸カルシウムが,食品工業でパンの製造には炭酸水素ナトリウムと酒石酸を主成分とするベーキングパウダーなどが用いられる。発泡剤系泡沫消火器(粉末,液体)には硫酸アルミニウムと炭酸水素ナトリウムの混合物が用いられる。
執筆者:内田 安三
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
溶媒に溶かしたときに溶液の泡を生じさせて、生成した泡を安定にして消滅を防ぐ作用をもつ物質をさす。これと別に、反応・分解によって多量の気体を発生して泡を生じる物質(たとえば炭酸水素ナトリウム)があり、これらは発泡剤といわれるが、起泡剤とは本来別のものである。もっとも、しばしば混用されているので注意が必要である。
泡立ちやすさを左右する起泡力と、泡の安定性を左右する泡沫(ほうまつ)安定度の二つの因子が、起泡剤にとっては重要な性質である。両因子ともに優れたものを泡立て剤、泡沫安定度に優れたものは泡沫安定剤とよんで区別する。せっけん、アルキル硫酸塩などは両因子ともに優れており、良好な泡立て剤である。卵白、サポニン、ゼラチンなどは泡沫を安定化する作用が強いが、起泡力はさほどではない(菓子用のメレンゲなどをつくってみるとよくわかる)。
浮遊選鉱用には松根油など植物油系の起泡剤が、消火器(泡沫消火器)にはアルブミンやケラチンなどの酸分解物の溶液がそれぞれに多用される。セメントやフォームラバーなども相応した界面活性剤を起泡剤として用いる。もっとも、気泡コンクリートなどは、アルミニウム粉末を混入して、発生する水素ガスによる気泡をつくらせることもあるが、この場合は発泡剤の利用である。
[山崎 昶]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
…気泡の発生方法も鉱石中に含まれる炭酸塩鉱物を酸と反応させ,発生する炭酸ガスの気泡を利用する方法などが考案された。しかし,これらの方法はほとんどすたれ,現在では,起泡剤と呼ばれる界面活性剤の少量添加により,機械的かくはん装置によって導入された多量の空気を細かく分散させるとともに,パルプの液面に泡沫層を形成させ,これを分離・回収するという方法,すなわち泡沫浮選froth flotationが普遍的方法となった。現在,浮選といえばこの泡沫浮選法をさすのが一般である。…
※「起泡剤」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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