起泡剤(読み)キホウザイ(英語表記)foaming agent

デジタル大辞泉 「起泡剤」の意味・読み・例文・類語

きほう‐ざい〔キハウ‐〕【起泡剤】

液体に溶けて、泡を生じやすく、できた泡を安定に保つ物質。石鹸せっけん・卵白・ゼラチンなど。
加熱などによって気体を発生し、泡を生じる物質。炭酸水素ナトリウムベーキングパウダーなど。

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精選版 日本国語大辞典 「起泡剤」の意味・読み・例文・類語

きほう‐ざいキハウ‥【起泡剤】

  1. 〘 名詞 〙 泡立ちをよくしたり、泡を発生させたりする物質。溶液内に気泡を安定に保持させるものと、気体を発生させて製品内に泡を生じさせるものの二種があり、界面活性剤(洗剤)や、炭酸塩化合物などが用いられる。

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改訂新版 世界大百科事典 「起泡剤」の意味・わかりやすい解説

起泡剤 (きほうざい)
foaming agent

安定な泡を形成させるため,溶液または原料に添加するもの。起泡剤には製作過程でガスを発生させることにより発泡させるいわゆる発泡剤気泡剤)をも含むことがあるが,一般には両者は区別して用いられる。溶液系の起泡剤は界面活性剤の一種である。泡の生成は液体の表面が拡大することであるから,溶液の表面張力を低下させる起泡力と,その泡が安定であるように保持する泡安定性をもたなければならない。起泡剤としては卵白,サポニン,ゼラチンや界面活性剤としてセッケン,アルキル硫酸塩等が用いられるが,界面活性とともに,強靱な吸着分子膜を形成させるために直鎖構造でやや親水性に富むものが選ばれる。また泡の安定性を高めるために一般に泡安定剤を併用する。泡安定剤としてはアミド酸,ヒドロキシアンモニウム塩,アルキルアミンのエチレンオキシド付加物,スルホキシド,マレイン酸誘導体縮合物,脂肪酸多価アルコールエステルなどが用いられ,とくにアミド類が多用される。起泡剤はセッケン,洗剤にも配合される。また鉱業用としては浮遊選鉱浮選剤として用いられ,この目的のためには,各種植物精油(パイン油,ユーカリ油,ショウノウ油),クレゾール酸,高級アルコール,ポリプロピレングリコールなどが利用される。泡沫(ほうまつ)消火剤(水系)の場合は泡の熱安定性,難燃性が重要で,ケラチンアルブミンのようなタンパク質とともに,フッ素系界面活性剤が用いられる。

 発泡剤としてプラスチック,コンクリートなどの成形時に添加するものの多くは,加熱時に窒素,二酸化炭素アンモニア水蒸気,酸素,水素等を発生するものである。発泡ゴム,発泡プラスチックには炭酸水素ナトリウム,炭酸アンモニウム酢酸アミルジアゾアミノベンゼンなどが,また泡ガラスには炭酸カルシウムが,食品工業でパンの製造には炭酸水素ナトリウムと酒石酸を主成分とするベーキングパウダーなどが用いられる。発泡剤系泡沫消火器(粉末,液体)には硫酸アルミニウムと炭酸水素ナトリウムの混合物が用いられる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「起泡剤」の意味・わかりやすい解説

起泡剤
きほうざい
foaming agent

溶媒に溶かしたときに溶液の泡を生じさせて、生成した泡を安定にして消滅を防ぐ作用をもつ物質をさす。これと別に、反応・分解によって多量の気体を発生して泡を生じる物質(たとえば炭酸水素ナトリウム)があり、これらは発泡剤といわれるが、起泡剤とは本来別のものである。もっとも、しばしば混用されているので注意が必要である。

 泡立ちやすさを左右する起泡力と、泡の安定性を左右する泡沫(ほうまつ)安定度の二つの因子が、起泡剤にとっては重要な性質である。両因子ともに優れたものを泡立て剤、泡沫安定度に優れたものは泡沫安定剤とよんで区別する。せっけん、アルキル硫酸塩などは両因子ともに優れており、良好な泡立て剤である。卵白、サポニン、ゼラチンなどは泡沫を安定化する作用が強いが、起泡力はさほどではない(菓子用のメレンゲなどをつくってみるとよくわかる)。

 浮遊選鉱用には松根油など植物油系の起泡剤が、消火器(泡沫消火器)にはアルブミンやケラチンなどの酸分解物の溶液がそれぞれに多用される。セメントやフォームラバーなども相応した界面活性剤を起泡剤として用いる。もっとも、気泡コンクリートなどは、アルミニウム粉末を混入して、発生する水素ガスによる気泡をつくらせることもあるが、この場合は発泡剤の利用である。

[山崎 昶]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「起泡剤」の意味・わかりやすい解説

起泡剤
きほうざい
foaming agent

気泡剤とも書く。 (1) 溶媒に溶けて溶液の泡を安定化する物質。たとえば石鹸,界面活性剤あるいは浮遊選鉱に用いられる起泡剤のように,振混ぜたりかき混ぜるとよく泡立ち,その泡が安定で長持ちするもの。泡沫消火剤,化粧品などにも利用される。 (2) 製品をつくる際その中で気体を泡状で発生させ,その泡を製品中に残すような,いわゆる発泡剤。多くは加熱によって窒素,酸素,水素,水蒸気,二酸化炭素,アンモニアなどのガスを発生させるもの。泡入り樹脂,スポンジゴムなどの製造には炭酸アンモニウム,ジアゾアミノベンゼンなどが,気泡ガラスの製造には炭素,炭酸カルシウムなどが,パンの製造には炭酸水素ナトリウムと酒石酸などが,発泡剤として使われる。

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百科事典マイペディア 「起泡剤」の意味・わかりやすい解説

起泡剤【きほうざい】

液体中に安定な泡を発生させるために添加する物質。界面活性剤の一種でセッケン,合成洗剤に配合。浮遊選鉱の際の浮選剤の一種として重要で,この場合パイン油・ユーカリ油などの植物精油,クレゾール酸などが使用される。
→関連項目泡消火器

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世界大百科事典(旧版)内の起泡剤の言及

【浮遊選鉱】より

…気泡の発生方法も鉱石中に含まれる炭酸塩鉱物を酸と反応させ,発生する炭酸ガスの気泡を利用する方法などが考案された。しかし,これらの方法はほとんどすたれ,現在では,起泡剤と呼ばれる界面活性剤の少量添加により,機械的かくはん装置によって導入された多量の空気を細かく分散させるとともに,パルプの液面に泡沫層を形成させ,これを分離・回収するという方法,すなわち泡沫浮選froth flotationが普遍的方法となった。現在,浮選といえばこの泡沫浮選法をさすのが一般である。…

※「起泡剤」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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