日本大百科全書(ニッポニカ) 「ベーキングパウダー」の意味・わかりやすい解説
ベーキングパウダー
べーきんぐぱうだー
baking powder
小麦粉製品の加工における膨剤の一種。略してBPと表記する。一般に膨らし粉ともいう。原料は炭酸水素ナトリウム(一般名は重曹)を主体とし、中和剤としての酸剤(リン酸アンモニウム、ミョウバンや焼きミョウバン、酒石酸水素カリウムなど)が配合される。炭酸水素ナトリウムだけでも膨剤として使えるが、反応後にアルカリ性物質が残るため、風味が低下し、しかもビタミンB1、Cなど、アルカリ性で不安定なビタミン類が破壊される。これを改良するために、酸剤でアルカリを中和したのがベーキングパウダーである。ベーキングパウダーの膨剤としての働きは、水分がある状態で加熱されると化学反応をおこして二酸化炭素(炭酸ガス)が発生する。このガスにより生地(きじ)に気泡ができて膨化する。配合を変えることによって、速効型、遅効型など、目的に応じたものがつくられる。ベーキングパウダーは水分や熱にあうと反応しやすいので、保存には湿気を避けることがたいせつである。また、ケーキの生地に加えたあとはすぐに焼くことが必要で、配合したまま放置すると膨化効力を失う。なお、パンに用いるイーストも膨剤であるが、イーストは化学反応ではなく、酵母菌の繁殖によって生じる二酸化炭素を利用したものである。
[河野友美]