アルミニウムの硫酸塩。無水和物と多くの水和物がある。水酸化アルミニウムを硫酸に溶かした溶液を濃縮、冷却すると十八水和物Al2(SO4)3・18H2O(式量664.4)が得られる。十八水和物は無色の単斜晶系結晶。比重1.69(17℃)。穏やかに熱すると十六、十、六の各水和物を経て350℃で無水和物となる。無水和物は無色の粉末。770℃で分解する。水に可溶、エタノール(エチルアルコール)に不溶。酸味があって渋い味がする。水に86.9g/100g(0℃)、107.4g/100g(20℃)溶ける。[Al(H2O)6]3+を含む錯塩であり、水溶液は加水分解して[Al(OH)(H2O)5]2+とH3O+を生じ、かなり強い酸性である。市販の液体硫酸アルミニウムはアルミナ分8.0~8.2%を含む水溶液をさす。上・下水道や製紙などの工業用水・排水浄化の凝集沈降剤として用いられる。また、アルミナホワイト、ミョウバンなどの原料、サイジング助剤、媒染剤、泡消火薬剤としての用途がある。
[守永健一・中原勝儼]
化学式Al2(SO4)3。市販品は,ボーキサイトまたは粘土を硫酸(20~50%)と煮沸し,アルミニウム分を溶かし出し,不溶分をろ過したろ液から通常16水和物として得られる。鉄を含まない純度の高いものは純水酸化アルミニウムを硫酸に溶解してつくる。16水和物は-19℃から95℃の水溶液から析出する。そのほか18水和物(比重1.62),27水和物,また10水和物,6水和物も知られている。水和物を340℃以上に加熱すると完全に脱水され無水和物となる。比重2.71。100gの水に対する溶解度31.2g(0℃),36.2g(20℃),52.2g(50℃),89.1g(100℃)。アルコールにほとんど不溶。水溶液を高温(たとえば150℃)で加水分解すると,通常3Al2O3・4SO3・9H2Oの組成の塩基性塩が得られるが,これは[H3O]2[Al6(SO4)4(OH)12]の構造をもっている。このような塩基性塩は多種類知られ,[Al2(OH)2(H2O)8](SO4)2(H2O)2もその一例である。1価陽イオンの硫酸塩との複塩,ミョウバンMⅠAl(SO4)2・12H2Oはよく知られているが,非ミョウバン型複塩Na3Al(SO4)3,(NH4)Al(SO4)2・6H2Oなどがいくらかある。皮なめし,紙のサイズ助剤,媒染剤,難燃布,水の浄化,医薬品などに用いられる。なお,硫酸アルミニウムをサイズ助剤に使った紙は,空気中の湿気を吸って加水分解を起こし,硫酸を生ずる。このため紙の繊維は硫酸に侵され,100年もたつとぼろぼろになる。近年,これら酸性紙に代わって,炭酸カルシウムをサイズ助剤に使った中性紙も製造される。
執筆者:水町 邦彦
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Al2(SO4)3(342.15).水酸化アルミニウムを濃硫酸で処理し,生じた十八水和物を加熱脱水すると得られる.無色の粉末.空気中で安定である.密度2.67 g cm-3.770 ℃ で分解する.水に易溶.水溶液は加水分解して酸性を呈する.希酸に可溶,エタノールに難溶.強熱するとAl2O3,SO2,SO3などに分解する.複塩をつくりやすい性質を利用して,ほかのアルミニウム塩の原料にされる.製紙のサイジング,媒染剤,水の浄化(沈殿剤),皮なめし,医薬品(潰瘍面の洗浄)などに用いられる.[CAS 10043-01-3:Al2(SO4)3][CAS 7784-31-8:Al2(SO4)3・18H2O]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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