足を温湯に浸(つ)けて温め洗うことをいう。全身浴(入浴)のできないときや足の疲労の激しいときに、バケツや洗面器に温湯を入れ、足を温めてから洗うわけであるが、入浴のできない病人にとっては、入浴のさっぱりした気分が味わえ、血液の循環が促されて足元が温まり、安眠が得られるという効果がある。寝たきりの病人に足浴を行う場合は、ベッドの足元にゴム布、ビニル布を敷き、その上にバスタオルを広げて洗面器を置く。洗面器にはややぬるめの湯を半量入れ、足を浸けて湯に慣れさせてから差し湯をして病人の好む温度に変えていく。最初から介助者の手でちょうどよいと感じる温度では、とかく病人にとっては熱すぎることが多いものである。洗う部分以外は綿毛布やタオルケットで覆い、寒さや恥ずかしさを感じさせない配慮をする。洗い終えたら洗面器を取り除き、バスタオルの上に足を置かせて水滴をよくぬぐい、必要ならパウダーを散布する。足の爪(つめ)を切るときは足浴後に行うようにする。長期臥床(がしょう)者は、かかとの部分が角質化して皮膚が固くなっているので、栄養クリームを擦り込むと効果的である。長期間歩行していない病人には、この足浴中に土踏まずを圧迫して指先から足背部、足底部をマッサージするとたいへん快く感じられ、尖足(せんそく)(足関節が底側屈曲位に固定する状態)の予防にもなる。
[山根信子]