物理療法(読み)ぶつりりょうほう(英語表記)physical therapy

翻訳|physical therapy

精選版 日本国語大辞典 「物理療法」の意味・読み・例文・類語

ぶつり‐りょうほう ‥レウハフ【物理療法】

〘名〙 物理学を応用した療法水治療法温泉療法電気療法光線療法運動療法などの類。対象としては、運動障害神経痛関節痛などがある。理学的療法。物療。
神経病時代(1932)〈佐多芳久〉「薬物の外に物理療法も〈略〉応用せられるやうになった」

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デジタル大辞泉 「物理療法」の意味・読み・例文・類語

ぶつり‐りょうほう〔‐レウハフ〕【物理療法】

物理的な方法によって治療を行う方法。機械的な力を利用する運動療法・マッサージや、電気療法・光線療法・水治療法・温熱療法気候療法などがある。理学療法。物療。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「物理療法」の意味・わかりやすい解説

物理療法
ぶつりりょうほう
physical therapy

水、熱、光、電気、機械的な力など種々の物理的作用要素を用いて行う治療法の総称。機械的療法には運動療法(治療体操など)をはじめ、マッサージ、牽引(けんいん)療法、鍼(はり)治療、カイロプラクティックなどのほか、超音波療法も要素的にはこれに含まれる。電気療法(電気治療)には低周波療法や高周波療法など、光線療法には赤外線療法紫外線療法など、水治(すいじ)療法には治療浴や罨法(あんぽう)などがそれぞれ含まれ、温泉療法は化学的な作用要素も加わるが物理療法に含まれる。

 また、気候療法には転地療法も含まれ、温熱療法には高周波療法、光線療法、水治療法などと内容的に重複するものが多い。なお、放射線療法放射線科で扱われ、狭義の物理療法には含まれない。

 一般に、物理療法に対する生体反応には種々の型がみられ、高温浴などには耐えられるが冷却に弱い型やその逆の型など、個人差が認められるので、与える刺激の種類や量には注意が必要である。すなわち、生体反応をおこす最低の刺激量から始め、1回量や反復回数および間隔などは個人差を考慮して決める。普通、いくつかの物理療法を組み合わせて行う場合が多いので、とくに刺激が過大にならないようにする。

 物理療法は理学療法ともよばれ、それぞれ物療、理療と略称されるが、リハビリテーション医学の進歩とともに、現在では主として物療は内科領域、理療はリハビリテーションや整形外科領域で用いられる。この場合の理学療法の内容は、運動療法を主体として補助的にその他の物理療法を用いる治療体系となっており、医療法では理学診療科という診療科名が認められている。その専門従事者として理学療法士および作業療法士がある。

 なお、物療内科というのは東京大学医学部にある診療科名で、内科学教室において物理療法学の講座が設けられ、内科学第一・第二・第三・第四とは別に内科物理療法学科が独立し、物療内科として診療にあたっている。

[小嶋碩夫]

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改訂新版 世界大百科事典 「物理療法」の意味・わかりやすい解説

物理療法 (ぶつりりょうほう)
physical therapy

広く光,熱,水,電気,および機械的なものなど物理的な作用を利用する治療法をいう。

(1)光線の利用 230~5000μmの波長を有する電磁波エネルギーを用いるもので,紫外線療法と赤外線療法がある。紫外線療法は紫外線の殺菌作用や生体に対する刺激作用を利用し,赤外線療法は赤外線の温熱作用を利用する。

(2)温度作用の利用 温熱療法と寒冷療法がある。温熱療法heat therapyで用いる温熱には乾熱,湿熱,転換熱が分類され,乾熱とは赤外線や電光浴など,湿熱とはホットパック,温水浴など,転換熱とは電磁波を応用した超短波,極超短波,物理的振動による超音波などである。温熱の生理的作用として,その強さは温度が不感温度(体温に近く,熱くも冷たくも感じない温度)からへだたるほど強く,また適用時間が長いほど強くなる。湿熱は乾熱より強く,個体差,身体部位により異なった効果があらわれる。温熱を用いると,皮膚温の上昇,血管拡張,循環促進,筋緊張の低下,鎮痛,消炎作用などによる効果が認められる。温熱の代りに氷などを用いる寒冷療法cryotherapyは局所の疼痛の緩和に有効なことがあり,また急性外傷に応用すると局所の血管を収縮させて浮腫形成を抑える。筋の痙性を抑制するために局所寒冷療法を用いることもある。

(3)水の利用 水を用いた治療法を水治療法というが,適用の部位により全身浴と部分浴に分けられ,水の温度により寒浴(10~20℃),冷浴(20~30℃),微温浴(30~35℃),不感温浴(34~35℃),温浴(35~40℃),高温浴(40~45℃)に分けられる。水の生体に対する作用は温度刺激のほかに浮力や水圧などの力学的作用があり,これが治療に応用されて水中運動療法が行われるが,循環器疾患を有する患者などには注意が必要である。部分浴として打撲や捻挫,骨折後遺症などに際し手足を水中に入れて渦流浴や気泡浴を用いることがある。これとは別に温泉治療が種々の運動障害に対してよく行われているが,単なる水治療のほかに温泉の化学的成分のはたらきも考えられ,また転地などの影響も加わる。

(4)電気の利用 通電による刺激もあるが,むしろジアテルミーとして電磁エネルギーを治療用の温熱として用いることが多い。
電気療法
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「物理療法」の意味・わかりやすい解説

物理療法
ぶつりりょうほう
physical therapy; physiotherapy

理学療法ともいう。物理的エネルギーを利用する医療。太陽光線,温泉などの自然エネルギーは古代ギリシア以来医療に応用されてきたが,電気,超短波など,新しく得られた人工エネルギーも物理療法のなかに加えられ,現在では広範囲の応用と方法をもつ。 (1) 天然・人工光線療法,(2) 温熱療法,(3) 水治療法,(4) 温・鉱泉療法,(5) 電気療法,(6) 短波・超短波療法,(7) 気候療法,(8) 運動・機械療法などに区分できる。それぞれ薬とメスの及ばぬ素地をもち,主としてリハビリテーションに用いられている。

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百科事典マイペディア 「物理療法」の意味・わかりやすい解説

物理療法【ぶつりりょうほう】

理学療法

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世界大百科事典(旧版)内の物理療法の言及

【理学療法】より

…かつて日本では物療,理療などとも呼ばれ,物理的な手段を用いて治療するという意味をもっていた。歴史的にマッサージが多く用いられ,そのほかに温熱や電気を利用し,どちらかといえば内科的疾患を対象としたものが物療と呼ばれ,これに対して整形外科疾患を対象に手術後のいわゆる後療法や変形矯正のための徒手訓練を理療と呼ぶ傾向があった。以上はすべて今日の理学療法に含まれるが,さらにリハビリテーション医学において運動機能を回復させる,運動の再教育という目標も加わることになった。…

【湿布】より

…局所に湿った布を当て,その冷却または温熱刺激によって治療を行う物理療法の一種。主として鎮痛,消炎,鎮静,滲出抑制,腫張抑制などの目的で用いられる。…

※「物理療法」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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