改訂新版 世界大百科事典 「距離測定装置」の意味・わかりやすい解説
距離測定装置 (きょりそくていそうち)
航空機から特定の地上局までの距離情報をパイロットに知らせる装置。通常distance measuring equipmentの頭文字をとってDMEと呼ばれる。一種の二次レーダーで,機上からの質問波を受けた地上局が自動的に応答波を発信,それが機上に達するまでの往復時間を計り,これを距離に換算して機上の表示器にディジタル表示する。ふつう962~1213MHzの周波数帯が使用され,有効範囲は水平距離で370km前後,高度で約2万3000m。精度が高く通常誤差は±0.4km以内であるが,測定距離は航空機と地上局との直線距離で,地図上の水平距離ではない。したがって高々度で地上局に近い場合にはその差が大きくなる。航空路用としてはVOR局に併設されるが,軍用のタカン(TACAN)に組み入れられる場合もある。また計器着陸装置や,TVOR(空港用のVOR)などに併用されるDMEは出力も小さく,有効範囲は約45km程度である。
DME航法
DMEを利用して自機の位置を求める航法をDME航法といい,これには二つのDME局からの距離を測定して位置を求める方式,およびVOR局との方位角と併設されているDME局までの距離を測定して位置を求める方式とがあり,前者は精度が高いので,慣性航法システムの補正基準として適する。またDME局から等距離を保って円弧上を飛行するDMEアーク方式は,ターミナル空域の出発,進入方式などにおける障害物回避などに利用されている。
→航法
執筆者:長野 英麿
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報