VHF omni-directional radio rangeの略称で、超短波全方向式無線標識施設のこと。VHF波の電波を利用して航空機の航行を援助する地上無線標識局で、原則として周波数帯108.0~117.975メガヘルツである。VOR局からは、全方向に位相が一定な基準位相信号と、方位がVOR局を中心に時計方向に変わるにつれて位相が遅れる可変位相信号が発射されており、航空機上の受信機でこれを受信し、二つの信号の位相差を測定することによってVOR局からの航空機の磁方位を知ることができる。VORはVHF波を利用しているため空電の影響が少なく、飛行コースを正確に指示することができるので、各種の航空路、出発・到着経路、VOR進入方式など、多くの計器飛行方式による経路がVORによって設定されている。VORの有効範囲は、見通し線(line of sight)以上の高度に制約される。また、有効到達距離は航空機の高度に応じて変化する。比較的出力の小さい空港用と出力の大きい航空路用とがある。VORはNDB(無指向性無線標識施設)より精度がよいため、現在では航空路を構成する無線標識の主流となっている。
[青木享起・仲村宸一郎]
VHF omni-directional radio rangeの略で,超短波全方位無線標識ともいう。飛行中の航空機に方位を知らせるための地上無線標識の一つで,超短波を使い,磁北を示す電波と,磁北から時計まわりに回る指向性電波を発射する。航空機はその磁北電波を受信した時間から指向性電波の受信時間までの差を測定して,発信局の方向と,その局へ近づきつつあるのか遠ざかりつつあるのか,予定のコースからどれくらいそれているのかなどのデータを知り,それらを計器上に示す。有効到達距離は200~400km程度。VOR局にはDME(距離測定装置)の併設されているところが多く,方位と距離を同時に測定して機位を知りうるようになっている。無線標識ではかつてNDB(無指向性無線標識)が主力であったが,VORのほうが精密で空電による妨害が少ないので,現在ではほとんどNDBにとって代わった。
→航空保安無線施設
執筆者:関川 栄一郎
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…第2次大戦後は機上で自動的に電波のくる方向を知ることのできる自動方向探知機automatic direction finder(略称ADF)が開発され,パイロットは容易に地上のNDB局からの関係方位を知ることができるようになった。しかし,NDBは空電の影響を受けやすく,また悪天候の場合には指度が不正確になるという欠点があり,さらに性能のよいVORが開発されるとともに,現在では,この360度全方位を識別できるVORと距離を自動的に計測できる距離測定装置(DME)が航空路の主要施設となっている。また悪天候や夜間の着陸誘導装置についても,第2次大戦中にアメリカでGCAが開発されたのをはじめ,より確実な計器着陸装置(ILS)の実用化など電波の利用が進み,さらに航空交通管制システムにも種々のレーダーが導入され,航空保安施設の中で電波を利用した施設の比重は増大している。…
※「VOR」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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