軍事目標主義(読み)ぐんじもくひょうしゅぎ(その他表記)doctrine of military objective

改訂新版 世界大百科事典 「軍事目標主義」の意味・わかりやすい解説

軍事目標主義 (ぐんじもくひょうしゅぎ)
doctrine of military objective

戦争において,軍事目標と非軍事物を区別し,前者に対する砲爆撃のみを許容するという国際法上の原則。つまり無差別的な砲爆撃(無差別爆撃)の禁止である。この主義は1907年ハーグ陸戦規則25条に無防守都市無防備都市)に対する攻撃・砲撃の禁止として表現され,空戦について23年ハーグ空戦規則(案)24条は,空中爆撃が軍事目標に対して行われる場合にのみ適法であるとした。ここにいう軍事目標とは〈その破壊または毀損きそん)が明らかに軍事的利益を交戦者に与えるような目標〉とされていたが,今日ではより厳格に,その性質,位置,用途または使用上,軍事行動に役だち,かつその破壊,毀損,捕獲または無力化がそのときの状況において明確な軍事的利益をもたらすものをいう。第2次大戦ではドイツのルールのような工場密集地帯全体を一つの軍事目標とみなす無差別的な目標区域爆撃がこの主義の延長だとして行われたが,戦争犠牲者保護に関する49年ジュネーブ諸条約に対する77年第一追加議定書は,今日の武力紛争においても軍事目標主義の有効性を再確認するとともに,目標区域爆撃を無差別爆撃とみなして禁止した。もっとも軍事目標の範囲は,軍隊,軍事工作物,軍需工場等のみならず,交通線やラジオ・テレビ施設等戦争遂行に重要な手段にも拡大される傾向にある。追加議定書は軍事目標を特定化せず,逆に非軍事物中とくに保護されるべきものをあげている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「軍事目標主義」の意味・わかりやすい解説

軍事目標主義
ぐんじもくひょうしゅぎ
doctrine of military objective

戦時の砲爆撃を軍事的目標にのみ限定しようとする考え方をいう。軍事的必要性と人道的考慮両面から認められてきたが,第2次世界大戦中の地域爆撃,戦略都市爆撃,核兵器等の大量破壊兵器の使用などには,この主義と相いれないものがある。軍事目標の概念を明確にすることはむずかしく,また総力的な現代戦においてはこの主義を厳格に適用することが困難になってきているが,他方軍事技術進歩により再び軍事目標主義を実行する可能性が生れている。 1991年の湾岸戦争において,目標指示装置を装備した爆撃機や誘導兵器により,いわゆるピンポイント攻撃が行われたのはその例である。

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