無防備都市(読み)ムボウビトシ(その他表記)Roma, Città Aperta

デジタル大辞泉 「無防備都市」の意味・読み・例文・類語

むぼうびとし【無防備都市】[映画]

《〈イタリアRoma, Citta, Aperta》イタリアの戦争映画。1945年作。監督はロッセリーニ。続く「戦火のかなた」「ドイツ零年」とあわせ戦争3部作と呼ばれる。ナチスドイツ支配下でのイタリアのレジスタンスの活動をネオレアリズモの手法で描く。第1回カンヌ国際映画祭グランプリ受賞。第19回米国アカデミー賞脚色賞を受賞。

むぼうび‐とし〔ムバウビ‐〕【無防備都市】

敵に対する防御抵抗を放棄した都市国際法上、攻撃が禁止される。無防守都市
[補説]作品名別項。→無防備都市

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精選版 日本国語大辞典 「無防備都市」の意味・読み・例文・類語

むぼうび‐としムバウビ‥【無防備都市】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙 敵に対する防御・抵抗を放棄した都市。国際法上、攻撃が禁止される。一九〇七年のハーグ陸戦条約で定められた。無防守都市。
  2. [ 2 ] ( 原題[イタリア語] Roma, Cittá Aperta ) イタリア映画。一九四五年作。監督R=ロッセリーニ。第二次世界大戦下、ナチスドイツ占領下のローマ舞台に、地下抵抗運動に従事する市民たちとその弾圧のさまを、ドキュメンタリーの手法で描く。ネオレアリスモの先駆的作品。

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改訂新版 世界大百科事典 「無防備都市」の意味・わかりやすい解説

無防備都市 (むぼうびとし)
Roma, Città Aperta

1945年製作のイタリア映画。イタリア映画のルネサンスを告げるとともに,〈ネオレアリズモ〉の記念碑的な第1作として知られるロベルト・ロッセリーニ監督のレジスタンス映画の名作。そもそもはナチス占領下のローマでレジスタンス運動に挺身し,ドイツ軍に捕えられて銃殺されたドン・モロシーニ神父の記録映画が出発点であったが,レジスタンスの闘士をまじえた討論からシナリオをふくらませ(なお,セルジオ・アミディとともにシナリオの執筆に参加した当時24歳のフェデリコ・フェリーニは,この作品から映画にかかわりはじめた),〈事実の再現〉に徹した劇映画をつくることになった。すべての事件が実際に起こった場所で撮影され,主要人物以外はすべて素人(それもその場にいた人々)を使った。こうした現実直視の姿勢と現場主義が〈ネオレアリズモ〉の方法の基礎となるとともに,戦後の世界の映画,とくに1950年代末のフランスの〈ヌーベル・バーグ〉に大きな影響を与えることになる。ドイツ軍に逮捕されて連れ去られる婚約者を追って,路上で射殺される女を演じたアンナ・マニャーニAnna Magnani(1908-73)が,世界的な名声を得た作品でもある。
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無防備都市 (むぼうびとし)
undefended cities

無防守都市(地域)ともいい,戦時において敵地上軍の占領の企図に抵抗する姿勢を示していない都市(地域)をいう。無防備(守)都市に対しては攻撃または砲撃が禁止され,たとえそこに軍事施設があっても,無差別的攻撃または砲撃を行うことは禁止される(1907年のハーグ陸戦規則25条)。海戦における敵海岸の砲撃や空中爆撃も同様に,無防備(守)都市に対しては禁止される(1907年の〈戦時海軍力ヲモッテスル砲撃ニ関スル条約〉1条,1923年のハーグ空戦規則案22条)。ただし,無防備(守)都市の中の軍事目標に対する攻(砲)撃は禁止されない。

 近時,武力紛争中交戦国間の協定によって戦線付近で文民を避難させる一定地域を暫定的に設定することが認められてきた。49年のジュネーブ文民条約15条の定める中立地帯,77年の第一追加議定書59条のいう無防備地域はこれにあたる。とくに後者ではその地域の属する国または適当な当局が無防備地域を宣言することもでき,他の交戦国はこれを攻撃してはならない。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「無防備都市」の意味・わかりやすい解説

無防備都市(映画)
むぼうびとし
Roma citta aperta

イタリア映画。ロベルト・ロッセリーニ監督の初期ネオレアリズモの傑作。1943年ドイツ軍ローマ撤退とともに撮影が始められ、資金不足、フィルム等の資材不足を補いつつ、イタリア解放の45年に完成、公開された。ドイツ占領下のローマで、ゲシュタポはレジスタンスの指導者を捕らえようと策略を巡らす。指導者は恋人の踊り子に裏切られ、司祭(アルド・ファブリツィ)に助けを求めるが、ともに捕らえられて拷問(ごうもん)で死に、司祭も銃殺される。彼らに協力するレジスタンスの女(アンナ・マニャーニ)も路上で撃ち殺される。非人間的な行為を容赦しない激怒の念が、現実に肉迫するロッセリーニのまなざしによって、長いショットの撮影法を生み出した。これは次の『戦火のかなた』(1946)とともに、ロケーション本位、現実の人間(非職業俳優)を重要視する方法にも通じており、映画表現に新しい核心を加えた作品であった。日本公開は1950年(昭和25)。

[鳥山 拡]


無防備都市(国際法)
むぼうびとし
undefended cities
open cities

1907年のハーグ陸戦規則第25条は、「防守セサル都市、村落、住宅又ハ建物ハ、如何(いか)ナル手段ニ依(よ)ルモ、之(これ)ヲ攻撃又ハ砲撃スルコトヲ得ス」と定めている。占領に対して防守抵抗しない都市は、軍事目標物があっても攻撃・砲撃する必要がないからである。

 しかし、海軍力による艦砲射撃や航空機による空中爆撃においては、軍事目標物が存在し、警告しても地方官憲がそれを破壊しない場合には、砲爆撃により破壊することができる。それに対し、軍事目標物、つまり、軍隊、軍事工作物、軍事建設物、軍事貯蔵所、兵器弾薬軍需品工場、軍用交通・運輸線のない都市に対する砲爆撃は、許されない。

 1949年のジュネーブ諸条約では、これに関連し、傷病者のための病院地帯・地区、老幼者婦女子のための安全地帯・地区、傷病者文民のための中立地帯の設定と砲爆撃からの保護を規定している。

[宮崎繁樹]

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百科事典マイペディア 「無防備都市」の意味・わかりやすい解説

無防備都市【むぼうびとし】

非武装都市ともいう。軍事力によって防守されていない都市で,陸戦や海戦において攻撃が禁じられる。1907年のハーグの陸戦および海戦条約でその地位が規定されているが(ハーグ平和会議),第1次大戦後の空戦規則では,防備・無防備の区別は取り入れられず,軍事目的主義となり,無防備でも軍事目的をもつ工場や交通手段などは爆撃可能とされた。→非武装地帯陸戦法規

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「無防備都市」の意味・わかりやすい解説

無防備都市
むぼうびとし
Roma citta aperta

イタリア映画。ミネルバ 1945年作品。監督ロベルト・ロッセリーニ。脚本 S.アミディ,フェデリコ・フェリーニ,ロベルト・ロッセリーニ。ナチス・ドイツの支配下にあった 1944年のローマを舞台に,ゲシュタポに追われるレジスタンスの闘士たちをめぐる愛と裏切り,壮絶な死を描いたネオレアリズモ映画の傑作。解放直後のローマで撮影され,世界中に衝撃を与えた。

無防備都市
むぼうびとし

非武装都市」のページをご覧ください。

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