1945年製作のイタリア映画。イタリア映画のルネサンスを告げるとともに,〈ネオレアリズモ〉の記念碑的な第1作として知られるロベルト・ロッセリーニ監督のレジスタンス映画の名作。そもそもはナチス占領下のローマでレジスタンス運動に挺身し,ドイツ軍に捕えられて銃殺されたドン・モロシーニ神父の記録映画が出発点であったが,レジスタンスの闘士をまじえた討論からシナリオをふくらませ(なお,セルジオ・アミディとともにシナリオの執筆に参加した当時24歳のフェデリコ・フェリーニは,この作品から映画にかかわりはじめた),〈事実の再現〉に徹した劇映画をつくることになった。すべての事件が実際に起こった場所で撮影され,主要人物以外はすべて素人(それもその場にいた人々)を使った。こうした現実直視の姿勢と現場主義が〈ネオレアリズモ〉の方法の基礎となるとともに,戦後の世界の映画,とくに1950年代末のフランスの〈ヌーベル・バーグ〉に大きな影響を与えることになる。ドイツ軍に逮捕されて連れ去られる婚約者を追って,路上で射殺される女を演じたアンナ・マニャーニAnna Magnani(1908-73)が,世界的な名声を得た作品でもある。
執筆者:広岡 勉
無防守都市(地域)ともいい,戦時において敵地上軍の占領の企図に抵抗する姿勢を示していない都市(地域)をいう。無防備(守)都市に対しては攻撃または砲撃が禁止され,たとえそこに軍事施設があっても,無差別的攻撃または砲撃を行うことは禁止される(1907年のハーグ陸戦規則25条)。海戦における敵海岸の砲撃や空中爆撃も同様に,無防備(守)都市に対しては禁止される(1907年の〈戦時海軍力ヲモッテスル砲撃ニ関スル条約〉1条,1923年のハーグ空戦規則案22条)。ただし,無防備(守)都市の中の軍事目標に対する攻(砲)撃は禁止されない。
近時,武力紛争中交戦国間の協定によって戦線付近で文民を避難させる一定地域を暫定的に設定することが認められてきた。49年のジュネーブ文民条約15条の定める中立地帯,77年の第一追加議定書59条のいう無防備地域はこれにあたる。とくに後者ではその地域の属する国または適当な当局が無防備地域を宣言することもでき,他の交戦国はこれを攻撃してはならない。
執筆者:藤田 久一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
イタリア映画。ロベルト・ロッセリーニ監督の初期ネオレアリズモの傑作。1943年ドイツ軍ローマ撤退とともに撮影が始められ、資金不足、フィルム等の資材不足を補いつつ、イタリア解放の45年に完成、公開された。ドイツ占領下のローマで、ゲシュタポはレジスタンスの指導者を捕らえようと策略を巡らす。指導者は恋人の踊り子に裏切られ、司祭(アルド・ファブリツィ)に助けを求めるが、ともに捕らえられて拷問(ごうもん)で死に、司祭も銃殺される。彼らに協力するレジスタンスの女(アンナ・マニャーニ)も路上で撃ち殺される。非人間的な行為を容赦しない激怒の念が、現実に肉迫するロッセリーニのまなざしによって、長いショットの撮影法を生み出した。これは次の『戦火のかなた』(1946)とともに、ロケーション本位、現実の人間(非職業俳優)を重要視する方法にも通じており、映画表現に新しい核心を加えた作品であった。日本公開は1950年(昭和25)。
[鳥山 拡]
1907年のハーグ陸戦規則第25条は、「防守セサル都市、村落、住宅又ハ建物ハ、如何(いか)ナル手段ニ依(よ)ルモ、之(これ)ヲ攻撃又ハ砲撃スルコトヲ得ス」と定めている。占領に対して防守抵抗しない都市は、軍事目標物があっても攻撃・砲撃する必要がないからである。
しかし、海軍力による艦砲射撃や航空機による空中爆撃においては、軍事目標物が存在し、警告しても地方官憲がそれを破壊しない場合には、砲爆撃により破壊することができる。それに対し、軍事目標物、つまり、軍隊、軍事工作物、軍事建設物、軍事貯蔵所、兵器弾薬軍需品工場、軍用交通・運輸線のない都市に対する砲爆撃は、許されない。
1949年のジュネーブ諸条約では、これに関連し、傷病者のための病院地帯・地区、老幼者婦女子のための安全地帯・地区、傷病者文民のための中立地帯の設定と砲爆撃からの保護を規定している。
[宮崎繁樹]
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...
12/17 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新