改訂新版 世界大百科事典 「農業者年金」の意味・わかりやすい解説
農業者年金 (のうぎょうしゃねんきん)
1970年の農業者年金基金法に基づく年金制度で,農業者の老後の生活の安定をはかるとともに,農業経営の移譲を通じて,経営の若返りや経営規模の拡大を促進するという,農政上の要請に応じて制定された。国民年金の付加年金としての性格をあわせもち,国民年金の被保険者である一定規模以上の農業経営主を対象としている。給付の種類には,経営移譲年金,農業者老齢年金,脱退一時金および死亡一時金がある。費用は,一律定額の保険料と国庫負担によりまかなわれている。被保険者数は,発足後しばらくは増加を続けたが,1975年度末の116万人を最高にその後減少傾向にあり,農業者年金の財政を不安定化している。給付の中心である経営移譲年金は1976年から支給開始され,受給者が急増しているが,その大半は後継者に対する移譲となっており,第三者への移譲はごく少数である。なお,農業者年金基金は年金事業のほかに,離農給付金支給事業,農地売買事業,農地取得のための融資事業を行っている。
執筆者:山崎 泰彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報