日本大百科全書(ニッポニカ) 「近代ギリシア文学」の意味・わかりやすい解説
近代ギリシア文学
きんだいぎりしあぶんがく
1453年のビザンティン帝国の崩壊から現代に至るギリシア語を用いた文学。
オスマン帝国支配の時代(1453~1821)には、みるべき作品はなく、わずかにベネチア支配下のクレタ島で民謡、戯曲などが盛んになったにすぎない。19世紀に入ると民族独立の気運が高まるとともに、文学活動も活発になった。しかしギリシアでは、古典に範を仰ぐ文章語と日常の話しことばとの差が極端に開いており、文学者の多くは口語を文学言語に高めるために苦闘しなければならなかった。19世紀には、まずイオニア派の詩人ソロモス(1798―1857)が『自由の賛歌』(1823)で新しい時代の開幕を告げ、新アテネ派の詩人パラマス(1859―1943)は韻文を哲学的なものに高めた。それに続く詩人ではシケリアノスAngelos Sikelianos(1884―1951)がもっとも重要で、アレクサンドリアで活動したカバフィス(1863―1933)も逸するわけにはいかない。その後の詩人ではセフェリス(1900―71)とエリティス(1911―96)が第二次世界大戦後にノーベル文学賞を受賞している。散文では、1930年代に口語を基礎とした文章語がほぼ確立し、注目すべき作家としてミリビリス(1892―1969)とベネジスIlias Venezis(1904―73)が第一次世界大戦とその後の戦争の体験を描いて反響をよんだ。詩人として名高いカザンザキス(1883―1957)は、小説およびエッセイによってギリシアの枠を超えて世界的な名声を博した。
[森安達也]