近代国家における自由(読み)きんだいこっかにおけるじゆう(その他表記)Liberty in the Modern State

日本大百科全書(ニッポニカ) 「近代国家における自由」の意味・わかりやすい解説

近代国家における自由
きんだいこっかにおけるじゆう
Liberty in the Modern State

イギリスの政治学者H・J・ラスキ代表作の一つ。1929年夏ブラウン大学コルバー・レクチュアズの講師として行った講義を基にしてその翌年出版された。48年全文にわたって改訂され、初版出版後に人類が経験した第二次世界大戦の意味づけを述べた「緒論」が新たに付け加えられている。本書に一貫して流れているものは、人間の自由を抑圧する現代国家のあり方への痛烈な批判である。「自由に対する尊敬あって初めて人生は美(うる)わしきものとなりうる」とする彼にとって、この自由はそれを守ろうとする人々の不断決意によってのみ保護されるものであった。

[柴田平三郎]

『飯坂良明訳『近代国家における自由』(岩波文庫)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「近代国家における自由」の意味・わかりやすい解説

近代国家における自由
きんだいこっかにおけるじゆう
Liberty in the Modern State

イギリスの政治学者 H.ラスキの著作。 1930年刊。この著作においてラスキは個人の良心を重視する多元的価値観の尊重前提に,「強制の存在しないこと」を自由とみなす従来の消極的自由の概念を平等への要求と結びつけ,両者が相互補完的なものであることの論証を試みた。自己決定,良心,理性的討論寛容を内容とする人間像を想定したラスキの自由論は,そうした人間性の開花妨げ,経済的不平等を助長している既存の政治体制への批判でもあり,ある意味で社会主義への接近をも示す急進的自由主義として展開されている。

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