日本大百科全書(ニッポニカ) 「近代国家における自由」の意味・わかりやすい解説
近代国家における自由
きんだいこっかにおけるじゆう
Liberty in the Modern State
イギリスの政治学者H・J・ラスキの代表作の一つ。1929年夏ブラウン大学コルバー・レクチュアズの講師として行った講義を基にしてその翌年出版された。48年全文にわたって改訂され、初版出版後に人類が経験した第二次世界大戦の意味づけを述べた「緒論」が新たに付け加えられている。本書に一貫して流れているものは、人間の自由を抑圧する現代国家のあり方への痛烈な批判である。「自由に対する尊敬あって初めて人生は美(うる)わしきものとなりうる」とする彼にとって、この自由はそれを守ろうとする人々の不断の決意によってのみ保護されるものであった。
[柴田平三郎]
『飯坂良明訳『近代国家における自由』(岩波文庫)』