逢びき

世界大百科事典 第2版の解説

あいびき【逢びき Brief Encounter】

イギリス映画。1946年製作。劇作家ノエル・カワードが自作の一幕物《静物画》(1936)をみずから脚色し,すでに彼の原作による《幸福なる種族》(1944),《陽気な幽霊》(1945)を撮った新鋭監督デビッド・リーンが映画化した作品。ロッセリーニの《無防備都市》(1946)やルネ・クレマンの《鉄路の闘い》(1946)など,戦火の跡もなまなましい現実を描いた当時のリアリズム映画とは対照的に,古めかしい愛の物語を激情を抑えたイギリス的な〈控えめ〉な語り口で描き,リーンは戦後イギリス映画を代表する監督の一人となった。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

逢びき
あいびき
Brief Encounter

イギリス映画。1945年作品。デビッド・リーン監督。妻子ある医師(トレバー・ハワードTrevor Howard 、1913―1988)と人妻(シリア・ジョンソンCelia Johnson、1908―1982)のつかのまの恋が、女性の独白をナレーションに切々と語られる。原作は駅の待合室のみを舞台にしたノエル・カワードの一幕ものの戯曲「静物画」。駅の待合室でふとしたことから知り合った男女は、出会いを重ねるなか、深い愛情を抱き合うようになるが、それぞれの家族に対する責任と良識の前に一線を越えることなく別れていく。明暗のコントラストを強調したロバート・クラスカーRobert Krasker(1913―1981)の撮影、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番を用いた背景音楽がイギリス的な大人の恋の物語を盛り上げる。クライマックス直後からの回想によって語り起こす巧妙なプロットをはじめ、映画的演出効果を駆使した情感豊かな名作。カンヌ国際映画祭審査員特別賞受賞。[宮本高晴]

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世界大百科事典内の逢びきの言及

【リーン】より

…イギリスの小市民的な文芸映画から国際的な超大作までをみごとにこなす〈職人的〉名匠として知られ,編集技術をマスターしたその緻密(ちみつ)な構成力がもっとも高く評価されている。記録映画,劇映画の編集から出発し,1941年,劇作家のノエル・カワードの初の製作・脚本・監督作品《われらの奉仕するところIn Which We Serve》に共同監督として招かれ,次いでカワードの製作・脚本(あるいは原作)による《幸福なる種族》(1944),《陽気な幽霊》《逢びき》(ともに1945)を撮って,第一級の監督として認められた。これらの作品で,イギリス的な日常生活をいきいきと描き出し,とくに《逢びき》は〈アダルト・ロマンス(おとなの恋愛映画)〉に新風を吹きこんだ名作となり,世界中に大きな影響を与えた。…

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