出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報
過敏性肺炎は、抗原の反復吸入によって起こるアレルギー性肺炎です。急性のものと慢性のものとがあり、急性のものでは原因抗原から離れることにより回復しますが、慢性になると病変と症状は続き、進行することがあります。
日本では、家のなかの環境中に存在する真菌であるトリコスポロンを抗原とする過敏性肺炎が最も多く、70%近くを占めています。過敏性肺炎は春から秋にかけ、夏を中心とした季節に多いため、夏型過敏性肺炎といわれています。
抗原を吸入してから8~13時間で症状が現れ、肺の病理組織では一般に好酸球が少なく、
原因になる他の抗原としては好熱性放線菌があり、主に酪農家に発生し、
急性のものは特定の抗原の
一般血液検査では末梢白血球数の上昇、CRPの上昇などの炎症反応が認められ、低酸素血症を示し、胸部X線像でびまん性すりガラス状陰影が認められます。しかし、このような検査データ、所見は他の疾患でも認められるので、確定診断のためには、抗原を吸入することにより発症するという経過と病歴、また原因抗原の吸入による誘発試験で疾患が発症する再現性を確認することなどにより、確実なものにする必要があります。
ただし、誘発試験は抗原の吸入により肺疾患が発症し、呼吸困難になることもあるので、安易に行わず、注意して行う必要があります。家のなかに存在する真菌(カビ)などが原因であれば、帰宅すると抗原を吸入することになるので、診断できることもあります。
ほかに気管支鏡を使って肺内の組織を採取する経気管支肺生検が行われることがあります。この検査は他の疾患を否定する意味もあります。本症の特徴的な病理組織像は、器質化肺炎、リンパ球性
気管支鏡を使って肺内に生理食塩水を注入して肺を洗う検査があります。これを気管支肺胞洗浄(BAL)と呼んでいます。この液のなかにはリンパ球が多くみられ、リンパ球のCD4とCD8の比率が低下する特徴があります。
また、血清中に原因となる抗原に対する抗体の存在を検索することも重要です。しかし、病気を起こしていない健常者でも陽性になることがあるので、この検査だけでは確定診断とはなりません。
このような検査を行うとともに、感染症、他の間質性肺炎と区別します。また、慢性過敏性肺炎の場合は、特発性間質性肺炎との区別が非常に困難なことがあります。
抗原の吸入を避けるようにすることが重要です。家などの環境が原因の場合は、家のなかの掃除や消毒、腐った木の部分の除去(台所、洗面所、風呂場)、風通しをよくするなどの工夫も重要です。また、防御マスクの装着などが効果を示す場合もあります。
薬物療法については、軽度の症状で日常生活に影響しない場合では無治療で経過をみることがあります。中等症、重症では、発熱、呼吸困難、低酸素血症などがあるため、ステロイド薬の経口・点滴投与や酸素吸入が必要な場合も少なからずあります。
急性の場合では、入院することなどにより原因から離れると回復することがほとんどです。しかし、慢性の場合では進行することがあります。慢性症例の頻度、正確な予後については、まだ明らかにされていません。
内科、とくに呼吸器を専門とする内科への受診が望まれます。
家などの環境が原因の場合は、家のなかの環境整備を行う必要があります。しかし、原因が仕事場などに関係する場合は、原因から離れる工夫が必要になります。
中島 正光
本症の抗原はさまざまですが、とくにカビ、
有機粉塵に含まれている微生物、とくに真菌類や鳥の糞、単純化合物のTDI(トルエン・ジイソシアネート)などを気道から繰り返し吸入することで発病します。原因物質が吸入されると、気道の奥深く肺胞まで到達します。肺の間質に炎症を起こすことから、外因性アレルギー性
気候や職業、地域差などによって病態が違い、夏型過敏性肺炎(トリコスポロン・クタネウスが原因)は北海道には少なく、サトウキビ肺症は南日本に、干し草を原因とするものは北海道や東北地方に多いといえます。
原因物質(抗原)の吸入量や時間などによって症状は違います。呼吸器症状と全身症状に分けられます。呼吸器症状では、
急性型の多くは大量の抗原を吸入したのち、4~8時間で症状を現します。
症状は数時間~十数時間続き、さらに断続的に現れますが、抗原を取り除くと数時間~数日以内に治ります。急性の発作を繰り返すと、食欲不振や体重の減少が目立ってきて慢性型へ移行することもあります。
慢性型は、数カ月~数年かけて病変が形成されるもので、抗原を少しずつ長期間吸入して起こります。軽い咳や運動時の息切れ、疲れやすさや体重減少などが徐々に進行してきます。肺の線維化も認められるようになります。軽症例では、微熱や無熱例も多くみられます。
抗原吸入の多くは日中の労働や作業と関わりがあります。慢性型の経過をたどるのは、夏型過敏性肺炎、空調肺炎、インコ飼病に多く、農夫肺や鳩飼病では、急性・慢性の両方がみられます。
アレルギーを起こす特定の環境から離れれば症状が治まるため、これが診断の手がかりになります。疑わしいものは抗原の吸入誘発テストで確かめます。胸部X線検査では、定型的な症例ではびまん性散布性粒状影を認めます。血液中の抗体の検出も重要です。また、診断としては病理所見をみることも重要で、肺生検などで診断されます。
誘発試験として、抗原吸入試験、環境誘発試験があります。抗原が特定できない場合や、家あるいは職場に原因があると考えられる時には、入院後に症状や検査成績が改善したあと、発症環境へ帰るなどして、入院前と同様の症状が再現できるか確認することも重要です。
根本的に治療するには、環境を変えるか抗原から離れるしかありません。対症療法としては、ステロイド薬(副腎皮質ホルモン薬)が有効です。重症例には酸素吸入、
相良 博典
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
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