デジタル大辞泉
「黴」の意味・読み・例文・類語
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かび【黴】
[1] 〘名〙
①
真菌類のうち、菌糸がからみ合った不定形の集合体をなすものの
総称。植物分類学上の単位ではなく、形態上の性質に対する通称。
藻菌類、
子嚢菌類の多く、および
担子菌類の一部が含まれる。《季・夏》 〔
日葡辞書(1603‐04)〕
※
怪談牡丹燈籠(1884)〈三遊亭円朝〉二「菓子抔
(など)は〈略〉皆
(カビ)を生
(はや)かして捨る位のものですから」
② いつかは朽ちはてて、むなしくなってしまうもののたとえ。無価値なもの。
※俳諧・冬の日(1685)「ふゆまつ納豆たたくなるべし〈
野水〉 はなに泣桜の黴とすてにける〈
芭蕉〉」
[2] 小説。徳田秋声作。明治四四年(
一九一一)発表。主人公笹村はまかないの
老婆の娘と関係を持ち、別れようと思うがずるずると結婚してしまうという内容の自然主義小説。のちの私小説の
精髄を見ることができる。
か・びる【黴】
〘自バ上一〙 か・ぶ 〘自バ上二〙 黴が生える。また、比喩的に、ものごとが古ぼけることなどにもいう。〔十巻本和名抄(934頃)〕
※浄瑠璃・平仮名盛衰記(1739)四「我等が様な浪人の黴(カビ)た襟にはつかれまい」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
黴
かび
徳田秋声の長編小説。 1911年発表。尾崎紅葉門下であった秋声が,師の死を転機に自然主義的作風に移った記念碑的作品。手伝い婆さんの娘お銀と,ずるずると関係を結んだ作家笹村が,出産,結婚を経ても不毛なままの愛に耐えきれず旅に出て,ゆきずりの女と一夜をともにする。じめじめした黴の生えたような重苦しい生活を突き放した眼で描き尽し,自然主義小説の頂点に立つものとして後代に大きな影響を残した。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報