(読み)カビ

デジタル大辞泉 「黴」の意味・読み・例文・類語

かび【×黴】

《「かび」と同語源》有機物の上に生じる菌類またはその菌糸の集まり。糸状菌など、キノコを生じないものをさしていい、適当な温度と水分があれば無制限に成長を続け、至るところに発生する。 夏》「たらちねの母の御手なる―のもの/汀女
[補説]書名別項。→
[類語]細菌バクテリア球菌乳酸菌黴菌雑菌病原菌病原体大腸菌サルモネラ菌ピロリ菌ヘリコバクターピロリスピロヘータリケッチアウイルス酵母イースト青黴麹黴

ばい【黴】[漢字項目]

[音]バイ(慣) [訓]かび かびる
かび。「黴菌
性病の一。梅毒。「黴毒駆黴検黴
黒ずむ。暗くかすか。「黴雨

かび【黴】[書名]

徳田秋声長編小説自身と妻をモデルとした私小説風の作品で、明治44年(1911)「東京朝日新聞」に連載単行本は明治45年(1912)刊。著者自然主義作家としての地位を確立した作品のひとつ

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精選版 日本国語大辞典 「黴」の意味・読み・例文・類語

かび【黴】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. 真菌類のうち、菌糸がからみ合った不定形の集合体をなすものの総称。植物分類学上の単位ではなく、形態上の性質に対する通称。藻菌類子嚢菌類の多く、および担子菌類の一部が含まれる。《 季語・夏 》 〔日葡辞書(1603‐04)〕
      1. [初出の実例]「菓子抔(など)は〈略〉皆(カビ)を生(はや)かして捨る位のものですから」(出典怪談牡丹燈籠(1884)〈三遊亭円朝〉二)
    2. いつかは朽ちはてて、むなしくなってしまうもののたとえ。無価値なもの。
      1. [初出の実例]「ふゆまつ納豆たたくなるべし〈野水〉 はなに泣桜の黴とすてにける〈芭蕉〉」(出典:俳諧・冬の日(1685))
  2. [ 2 ] 小説。徳田秋声作。明治四四年(一九一一)発表。主人公笹村はまかないの老婆の娘と関係を持ち、別れようと思うがずるずると結婚してしまうという内容の自然主義小説。のちの私小説の精髄を見ることができる。

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普及版 字通 「黴」の読み・字形・画数・意味


23画

[字音] バイ・ビ
[字訓] かび・くろい・すすける

[説文解字]

[字形] 形声
声符は(微)(び)の省文。〔説文〕十上に「久雨に中(あた)りてきなり」とあり、湿ってかびが生え、青黒い斑点となることをいう。の声義をうける。

[訓義]
1. かび、かびがつく、くさる。
2. くろい、すすける。
3. 梅と通用することがある。

[古辞書の訓]
名義抄〕黴 クミタリ 〔字鏡〕黴 モノノク・モタル・クミタリ

[語系]
黴mi、・煤muは声義近く、みなすすけたように黒いものをいう。(墨)mkもその系統の語。miuiは微小、黴・煤はみな微小な粒子状のもので、黴はその声義をうける。

[熟語]
黴雨黴気・黴菌黴黒黴湿黴瘠・黴毒黴爛・黴

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「黴」の意味・わかりやすい解説


かび

徳田秋声の長編小説。 1911年発表。尾崎紅葉門下であった秋声が,師の死を転機に自然主義的作風に移った記念碑的作品。手伝い婆さんの娘お銀と,ずるずると関係を結んだ作家笹村が,出産,結婚を経ても不毛なままの愛に耐えきれず旅に出て,ゆきずりの女と一夜をともにする。じめじめした黴の生えたような重苦しい生活を突き放した眼で描き尽し,自然主義小説の頂点に立つものとして後代に大きな影響を残した。

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【徳田秋声】より

…短編《藪かうじ》(1896),長編《雲のゆくへ》(1900)などでやや世評を得たものの,その地味で暗い作風ゆえに,同門の鏡花や小栗風葉ほどの人気はなかった。しかし1903年の紅葉の死去から日露戦争後にかけて自然主義文学が台頭するに及んで,その冷徹な客観描写はしだいに彫琢の度を加え,中編《新世帯(あらじよたい)》(1908)を経て,夫人はまの前歴に取材した《足迹(あしあと)》(1910),彼女との結婚と紅葉の死の前後を私小説風に描いた《黴(かび)》(1911)を発表,文壇的地位を確立した。生田長江は彼を〈生れたる自然派〉と呼び,田山花袋は《足迹》を〈かよわい女のかげに広いライフが無限に展開されている〉と評している。…

※「黴」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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