過越の祭(読み)すぎこしのまつり(その他表記)Passover

翻訳|Passover

改訂新版 世界大百科事典 「過越の祭」の意味・わかりやすい解説

過越の祭 (すぎこしのまつり)
Passover

ユダヤ教祭日ヘブライ語でPesaḥという。ユダヤ暦のニサン月14日の夜(太陽暦の3月か4月)に始まり1週間続く。エジプト人奴隷であったユダヤ人先祖が,モーセに率いられてエジプトを脱出したとき,神はエジプト中の初子(ういご)を殺したが,小羊の血を入口に塗ったヘブライ人の家だけは過ぎ越したという故事に由来する。最初の晩にセデルと呼ばれる正餐催し,小羊,苦菜,種入れぬパンを食べ,〈ハガダー〉と呼ばれる出エジプトに関する物語を読んで,先祖がエジプトの奴隷の身分から救い出されたことを記念する。共観福音書は,イエス・キリストの〈最後の晩餐〉がセデルであったと伝える。
除酵祭
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百科事典マイペディア 「過越の祭」の意味・わかりやすい解説

過越の祭【すぎこしのまつり】

ユダヤ教の祭日の一つ。英語でPassover。ユダヤ暦ニサン月14日の夜から1週間。奴隷状態にあったユダヤ民族のエジプト脱出を記念する。神がエジプト中の初子を殺したとき,仔羊の血を門口に塗ったユダヤ人の家だけは過ぎ越したという故事にちなむ。初日に〈セデル〉という正餐をとる。

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とっさの日本語便利帳 「過越の祭」の解説

過越の祭

災い天使がエジプトを襲いエジプト人の長子を殺したが、神の命によって門口に子羊の血を塗っていたイスラエル人の家は素通りし、災いを下さなかった。これを記念して、春に八日間祝うユダヤ人の祭。

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世界大百科事典(旧版)内の過越の祭の言及

【最後の晩餐】より

…《マルコによる福音書》14章17節以下の記事によると,この晩餐の席上で,イエスは自分を裏切ろうとしている者(イスカリオテのユダ)がいることを指摘するとともに,パンとブドウ酒をとって,それらが自分の体であり,多くの人のために流す契約の血であると言った。同様の記事は《マタイによる福音書》《ルカによる福音書》にもあり,これらの共観福音書では,〈最後の晩餐〉が過越(すぎこし)の食事(過越の祭)と結びつけられている。このことは,過越の小羊の血がイスラエルの罪を贖(あがな)ったように,イエスの十字架の死が人々の罪の贖いのための死であることを指し示している。…

【ヒツジ(羊)】より

…この差がどこから生じているのかはともかくとして,繁殖能力のある雄の頭数を削減するのは以上のような理由による。ユダヤ・キリスト教世界で,過越(すぎこし)の祭ないし復活祭で当年生れの雄の子羊を食べる習慣は,この雄子羊の大量屠殺の習慣に根ざしていると考えられるが,労役用の家畜として雄の利用価値が見いだされる牛に大量屠殺がないのと対照的である。イスラム世界で重用される子羊の毛皮を用いたアストラカンの帽子も,本来的にはこのようにして間引かれた雄子羊の毛皮が用いられている。…

【ユダヤ教】より

プリム祭(アダル月14~15日)――エステルがユダヤ人を救った伝承の記念。過越の祭(ニサン月15~21日)――エジプト脱出の記念。七週祭(シワン月6日)――モーセに十誡が授けられたことの記念。…

※「過越の祭」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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