郵便物のあて先に書く番号。郵便番号制は、郵便物の区分作業が能率的にしかも正確にできることから、1961年に旧西ドイツで最初に制度化され、日本では1968年(昭和43)に導入された。当初は5桁(けた)であったが、1998年(平成10)2月2日に7桁に変更された。導入当初の日本の郵便番号は、地域と郵便物の配達を行う全国の集配郵便局ごとにつけられ、配達する郵便物の多い局には3桁の数字(親番号)、その他の局は、その番号に続いて2桁の数字(子番号)がつけられた。1日に3000通以上の配達物のある事業所などには、専用の子番号がつけられた。定形郵便物や郵便葉書に記載された郵便番号を電子光学的に自動的に読み取って区分する郵便番号自動読取区分機が開発され、全国の主要な郵便局に配備された。機械による区分を効率化するため、郵便番号を記載する位置も定められ、封筒や葉書の所定の位置に、番号記入枠が印刷されている。郵便番号は、この枠の中に記載することになっている。郵便番号自動読取区分機は、この枠の中に記載された番号を読み取って区分する。その後、あて名印刷機あるいはすかし窓のついた封筒を用いた郵便物の番号を自動的に読み取って区分する区分機も開発され、それらについての番号記入方法も定められた。
1998年から実施された新郵便番号は、旧番号を基本とし、地域と配達局、それに配達する区域内の町名あるいは字名を単位とする町域にまで番号がつけられた。新郵便番号の実施に伴って開発された新型の自動読取区分機で7桁の番号とあて所を読み取り、住所全体を表すバーコードを印字し、このバーコードを読み取ることによって、郵便物を配達の道順にしたがって並べることも可能になった。
7桁の郵便番号が正確に記入されている場合は、あて所の市町村名(行政区名)、また市町村名に続く町域名に先だつ「大字(おおあざ)」あるいは「字」がある場合、その大字、字の文字は省略できることになった。ただし、たとえば、「仙北町大字堀見内字南田茂木」のように、大字と字がある場合は、大字は省略できるが、字は省略できない。また、郵便番号記入枠から番号がはみ出して書かれたり、続け文字のようにつながって書かれたもの、あて所の町名などが続け文字になったり、番号や町名に側線あるいは下線が引いてあると読み取れなくなる。大形の郵便物、小包郵便物なども含め、すべての郵便物は郵便番号による区分が行われており、表面にわかりやすく番号を記載することになっている。
従来の5桁の郵便番号は、引受局から配達局に至るまでの事務処理を効率的に進めるものであったが、7桁の新郵便番号は、それに加え、到着後の配達作業の効率化をも目ざしたものである。このため、人力に依存する割合の高い郵便事業をさらに効率的に運営することができ、安い料金で、安定した郵便サービスが持続できることになった。新郵便番号に対応した新型の区分機は、1999年3月末までに、388局に623台配備され、4000人を超える要員が削減された。実施1年後の郵便番号記載率は93.7%であった。
[小林正義]
郵便局の配達受持ち区域ごとにつけられた番号。郵便番号は1962年西ドイツで採用されたのがはじめで,その後アメリカ,イギリス,フランスをはじめとする欧米諸国からフィリピン,台湾,韓国などのアジア諸国に至るまで多くの国々でその価値が高く評価され,世界的な趨勢(すうせい)として採用されてきている。日本においては,郵便番号制は郵便事業近代化の主軸として1968年7月1日に実施された。当初は5桁であったが,98年2月2日から7桁になった。従来の5桁の番号は,郵便を送達する経路,郵便局の規模等に基づいて系統的に付定されており,3桁の数字の区域と,さらに2桁の数字をつけた5桁の区域とがあるが,最初の2桁の数字は県等の地域を表しており,3番目の数字はその地区の中心となる郵便局(中継局)の番号を表している。また,4桁目と5桁目の数字は,その中心局から郵便物が中継されて送られてくる比較的取扱い郵便物数の少ない郵便局,あるいは中心局の私書箱等を示す番号である。7桁の新郵便番号は,5桁の番号に町域(大字を含む)の番号を付加し,さらに大口事業所には個別に新番号を付定したものである。
日本においては,郵便事業近代化の主軸として1968年7月1日から郵便番号制度を採用した。郵便番号採用の効果として次のような点をあげることができる。(1)町村合併等により全国的に行政区の広域化が図られた結果,一つの行政区(市,区,町,村)をいくつかの郵便局で配達している地域が多い。従来はこの地域あての郵便物を配達局ごとに区分けするには,その地域の町名,字(あざ)名とその受持ち配達局をすべて記憶していなければならなかった。しかし引受局ですべて配達局ごとに区分けするのはひじょうに困難であるので,引き受けた郵便物をいったん行政区ごとに区分けして,その地域の中心となる局へ送り,そこで再度配達局ごとに区分けしなおす方法をとっていた。郵便番号があれば,番号合せだけで容易に,しかも能率的に直接配達局ごとの区分けができるうえ,途中で区分けしなおす手間も省けるので,それだけ郵便が早く届く。(2)郵便番号の終極の目的である機械による区分けが可能となる結果,人手が少なくてすむので,郵便コストの上昇をおさえることができる。(3)郵便の差出数は年間を通してたえず変動しており,年末などのように著しく増加したときは,職員の超過勤務などでは処理しきれなくなり,多数の非常勤職員を雇用して業務の運行を確保することになる。短期間の非常勤職員も,郵便番号があれば,ほとんど訓練なしに能率よく区分けできるうえ,まちがいも少なくなるので,円滑な業務運行が図られ,安定したサービスを提供することが可能となる。
執筆者:林 幸司
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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