酸化タングステン(読み)サンカタングステン

化学辞典 第2版 「酸化タングステン」の解説

酸化タングステン
サンカタングステン
tungsten oxide

】酸化タングステン(Ⅳ):WO2(215.85).二酸化タングステンともいう.三酸化タングステンを水素気流中で熱すると得られる.褐色粉末.密度12.1 g cm-3.1500~1600 ℃ で分解する.常温では空気中で安定であるが,熱すると酸化されて三酸化タングステンとなる.水素気流中でしゃく熱すると金属タングステンに還元される.水に不溶,酸,水酸化カリウム水溶液に可溶.[CAS 12036-22-5]【】酸化タングステン(Ⅵ):WO3(231.85).三酸化タングステンともいう.金属タングステン,あるいはタングステンのほかの酸化物ないし硫化物を空気中または酸素中で熱すると得られる.淡黄色の粉末.熱すれば橙色,冷却するともとに戻り,融解すると結晶性物質となる.結晶は斜方晶系.密度7.16 g cm-3.融点1473 ℃,沸点約1750 ℃.水に微溶.アルカリ,アンモニア水には溶けてタングステン酸塩を生じる.したがって無水タングステン酸ともよばれる.タングステンの最終酸化物で,空気中でも水溶液中でも安定であるが,還元剤が存在すると種々の低酸化物を生じる.合金繊維防火加工,陶磁器用顔料,タングステンの製造有機合成の触媒,セラミックス添加剤,焼結金属添加剤などに用いられる.[CAS 1314-35-8]【】そのほか,W3O,W4O3,WO,W2O3,W5O9,W4O8,W3O8,W2O5(W4O11),W5O14が報告されている.これらの酸化物の色は,酸化数が増すにつれて,灰→茶→紫→青→黄へ変化する.青紫色のW2O5はタングステンブルーの主成分とされている.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

世界大百科事典(旧版)内の酸化タングステンの言及

【タングステン】より

…乾いていると安定であるが,湿っていると空気中では酸化される。β型は室温でも発火するが,α型の粉末はきわめて安定で,熱すると300℃で酸化が始まり,650℃で酸化タングステン(VI) WO3を生ずる。希塩酸,希硫酸と温めるとわずかに侵されるが,濃硝酸では熱時よく溶ける。…

※「酸化タングステン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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