日本大百科全書(ニッポニカ) 「野田宇太郎」の意味・わかりやすい解説
野田宇太郎
のだうたろう
(1909―1984)
詩人、評論家。福岡県立石村(現小郡市)に生まれる。県立朝倉中学卒業後、早稲田(わせだ)第一高等学院に学ぶ。1940年(昭和15)以後、『新風土』『新文化』『文芸』『芸林間歩(かんぽ)』の編集に携わるかたわら、『旅愁』『すみれうた』など叙情的な詩集を刊行、戦中戦後の編集者時代の記録『灰の季節』『混沌(こんとん)の季節』を残した。文芸評論としては明治末期の浪漫(ろうまん)主義研究に新生面を開き、『パンの会』(1949)、『日本耽美(たんび)派文学の誕生』(1951)、『きしのあかしや』(1955)、『瓦斯燈(ガスとう)文芸考』(1961)などを発表。また「文学散歩」の創始者として『新東京文学散歩』(1951)をはじめとする28冊の著作をまとめ、文学史跡の記念保存に力を尽くした。76年(昭和51)『日本耽美派文学の誕生』により芸術選奨文部大臣賞を受賞。
[近藤信行]
『『野田宇太郎文学散歩』24巻・別巻四(1977~85・文一総合出版)』▽『『定本野田宇太郎全詩集』全一巻(1982・蒼土舎)』