量子暗号

知恵蔵の解説

量子暗号

量子力学の特徴を生かす「無敵の暗号」。物理状態の重なりが観測瞬間に1つに定まることや、遠く離れた粒子の状態が同時に決まることなどを活用する。盗聴は観測行為として痕跡を残すので見破られる。光子1粒ごとの偏光などをみる方法があるが、微弱な光を通信に使う難しさは避けられない。最近は、信号を載せたレーザー光量子力学によってゆらぐことを用いる新方式(Y00方式)の研究も進む。どちらの方式も、暗号の核心数理のしくみではなく物理現象を据え、盗聴を拒む。

(尾関章 朝日新聞記者 / 2007年)

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デジタル大辞泉の解説

りょうし‐あんごう〔リヤウシアンガウ〕【量子暗号】

quantum cryptography量子力学原理を応用した暗号技術。通信経路上で盗聴されると量子状態が乱れ、通信内容が読み出せなくなる。また盗聴行為そのものも感知できる仕組みになっている。原理的に盗聴や第三者による解読が不可能な暗号であると考えられている。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

量子暗号
りょうしあんごう
quantum cryptography

物理量の最小単位である量子の特性を利用した暗号化技術。他者が解読できない暗号通信として期待されている。

 量子力学の基本原理であるハイゼンベルクの不確定性原理によると、量子は測定した時点で別の状態に変化し、未知の状態のままでのコピーもできない。つまり、だれかが量子を観察した時点で別のものに変貌(へんぼう)するため、他者によって観察されたかどうかがすぐにわかる。この原理を利用して、暗号鍵を共有しようというものである。現在の暗号化技術の基本は、送りたいデータに数学的な処理を行うことで、複雑で判読できない別のデータに書き換えるというものである。データを盗もうとする者がこれを解読するには、莫大(ばくだい)なコンピュータ資源と時間が必要となる。つまり、解読が非現実的であることが、安全性の根拠となっている。一方、量子暗号では、他者がだれも見ていないことを確認することで安全性を担保する。これまでの暗号化技術のようにコンピュータの性能が上がることで解読される危険性が増大しないため、究極の暗号化技術ととらえられており、量子コンピュータや量子通信と並んで量子力学の実用化の一つとして期待されている。

[編集部]

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