最新の暗号技術。重要な文書や画像などのデータを暗号化した上で、その暗号を解く「鍵」を素粒子の一つである「光子」に載せて光ファイバー網や衛星通信を通じて送受信する。送信の途中で第三者がデータを盗み見ようとした場合、光子の状態が変化し、鍵が届く前に警告してデータの解読を防ぐ。
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物理量の最小単位である量子の特性を利用した暗号化技術。他者が解読できない暗号通信として期待されている。
量子力学の基本原理であるハイゼンベルクの不確定性原理によると、量子は測定した時点で別の状態に変化し、未知の状態のままでのコピーもできない。つまり、だれかが量子を観察した時点で別のものに変貌(へんぼう)するため、他者によって観察されたかどうかがすぐにわかる。この原理を利用して、暗号鍵を共有しようというものである。現在の暗号化技術の基本は、送りたいデータに数学的な処理を行うことで、複雑で判読できない別のデータに書き換えるというものである。データを盗もうとする者がこれを解読するには、莫大(ばくだい)なコンピュータ資源と時間が必要となる。つまり、解読が非現実的であることが、安全性の根拠となっている。一方、量子暗号では、他者がだれも見ていないことを確認することで安全性を担保する。これまでの暗号化技術のようにコンピュータの性能が上がることで解読される危険性が増大しないため、究極の暗号化技術ととらえられており、量子コンピュータや量子通信と並んで量子力学の実用化の一つとして期待されている。
[編集部]
(尾関章 朝日新聞記者 / 2007年)
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