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針生一郎 はりういちろう

百科事典マイペディアの解説

針生一郎【はりういちろう】

評論家。東北大学国文科卒業後,東大大学院で美学を専攻。ルカーチの文学・芸術理論の翻訳・紹介から出発。その後,美術評論家として活躍する一方,文芸評論家としてプロレタリア文学運動・〈政治と文学〉の問題の検討を試みた。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plusの解説

針生一郎 はりう-いちろう

1925-2010 昭和後期-平成時代の評論家。
大正14年12月1日生まれ。東大大学院在学中に花田清輝らの「夜の会」に参加。昭和28年共産党に入党(61年除名)。美術や文芸,社会思想まで,幅ひろい批評をおこない,国際美術展などのプランナーとしても活躍。49年和光大教授,のち岡山県立大教授。新日本文学会議長。平成22年5月26日死去。84歳。宮城県出身。東北大卒。著作に「針生一郎評論」など。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

針生一郎
はりういちろう
(1925―2010)

美術・文芸評論家。宮城県生まれ。1948年(昭和23)東北大学文学部国文科卒業。1953年まで東京大学文学部美学特別研究生として過ごす。第二次世界大戦前は日本浪漫派の文芸評論家保田与重郎(やすだよじゅうろう)に深く傾倒するが、戦後には左派へと転向、シュルレアリスムやワルター・ベンヤミン、美学者の中井正一(まさかず)(1900―1952)らの影響を強く受ける。東大時代に前衛芸術グループ「夜の会」に参加、花田清輝(きよてる)、岡本太郎、野間宏らの知遇を得て評論家として出発し、1952~1957年『美術批評』誌に寄稿して頭角を現した。戦後世代特有の問題意識を内在化し、またアバンギャルドへの強い共感に貫かれた針生の評論は、それ以前の評論と明らかに異質なものとして注目を集め、ほどなく東野芳明(とうのよしあき)、中原佑介と並んで1950年代後半~1960年代の美術評論をリードする役割を果たすようになった。
 ただし針生の場合は、1953年に日本共産党に入党、日米安保闘争で党の指導を批判したために1961年に除名され、その後は新日本文学会を拠点とするなど、左派的な政治性や思想や文学も視野に入れた活動を展開していた点で他の2人とは明らかな違いがある。反権力的な社会批評や情況論としての側面が強くうかがわれる針生の批評は「あれもダメ。これもダメ。俺は待ってるぜ」(東野)批評と称されたこともあった。『芸術の前衛』(1961)、『文化革命の方へ』(1973)、『わが愛憎の画家たち』(1983)、『修羅の画家――評伝阿部合成(ごうせい)』(1990)など多くの著書があり、1970年以前の著作は『針生一郎評論』全6巻(1969~1970)にまとめられている。なかでも、『戦後美術盛衰史』(1979)は、戦後日本美術の総括を試みた先例のない意欲作だった。また美術以外にも、プロレタリア文学を題材とした著作やベンヤミン、ジェルジ・ルカーチの翻訳など、多方面の著訳書を残している。
 1968年にはベネチア・ビエンナーレ、1977年、1979年にはサン・パウロ・ビエンナーレのコミッショナーに選出されるなど、国際展をはじめ多くの展覧会企画に関与しており、2000年(平成12)の光州ビエンナーレでは日本人として初のコミッショナーに選出され、人権や日本の戦争責任などをテーマとした企画を実現するなど、健在振りを示した。
 多摩美術大学教授、和光大学教授(後に名誉教授)、岡山県立大学大学院教授を歴任したほか、新日本文学会議長、日本アジア・アフリカ作家会議代表世話人、日本AALA(アジア、アフリカ、ラテン・アメリカ)美術家会議議長、美術評論家連盟会長などを歴任。2000年には神奈川文化賞を受賞した。美術家の大浦信行(1949― )が監督したドキュメンタリー映画『日本心中――針生一郎・日本を丸ごと抱え込んでしまった男』(2002)のなかで長年の足跡について回顧した針生は、自らの批評精神の正統的な後継を美術評論家椹木野衣(さわらぎのい)(1962― )の著書『日本・現代・美術』(1998)に見いだした。[暮沢剛巳]
『『芸術の前衛』(1961・弘文堂) ▽『針生一郎評論』全6巻(1969~70・田畑書店) ▽『文化革命の方へ――針生一郎芸術論集』(1973・朝日新聞社) ▽『戦後美術盛衰史』(1979・東京書籍) ▽『わが愛憎の画家たち』(1983・平凡社) ▽『修羅の画家――評伝阿部合成』(岩波同時代ライブラリー) ▽千葉成夫著『現代美術逸脱史 1945~1985』(1986・晶文社) ▽椹木野衣著『日本・現代・美術』(1998・新潮社)』

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