日本大百科全書(ニッポニカ) 「斑岩銅鉱床」の意味・わかりやすい解説
斑岩銅鉱床
はんがんどうこうしょう
porphyry copper deposit
斑状組織をもつ花崗(かこう)岩質貫入岩体に関連して形成された鉱染状、細脈網状の銅鉱床。鉱床の形はきのこ状、円柱状など多様で、岩株の頂部や周縁部に形成されていることが多い。一般に、銅品位は低いが、1鉱床で埋蔵鉱量が数億トンから10億トンと膨大であることを特徴とする。また、鉱床の分布地域が比較的地表に近いということもあり、大規模採掘に適している。鉱石採掘量は、1日当り数万トンから10万トンで、一般に大鉱山の範疇(はんちゅう)に入る。この型の鉱床は中生代以降のアルプス造山帯に多く、とくに環太平洋造山帯には多数の鉱床が発見されている。北アメリカ大陸西部、南アメリカ大陸のアンデス山脈、フィリピン、パプア・ニューギニア、ソロモン諸島には多くの鉱床があるが、日本列島には経済性のある鉱床はまだ発見されていない。新生代の鉱床はパキスタン、イラン、ルーマニア、ブルガリアなどにも発見されている。一方、北アメリカ大陸東部、オーストラリア、旧ソ連地域、中国には古生代や中生代などやや古い地質時代の鉱床が分布する。
鉱石鉱物は主として黄鉄鉱、黄銅鉱、磁硫鉄鉱などの硫化鉱物により構成される。また、一般に金または輝水鉛鉱を少量随伴するのを特徴とする。斑岩型鉱床として、銅鉱物をほとんど含まない、斑岩モリブデン鉱床、斑岩錫(すず)鉱床、斑岩タングステン鉱床なども知られているが、産出鉱床例は斑岩銅鉱床に比べてきわめて少ない。斑岩銅で代表される斑岩型鉱床は、地殻浅所に貫入してきた珪(けい)長質マグマ(酸性マグマ)が冷却、固結する過程で、濃集してくるマグマ中の水の放出、マグマ熱により生成された熱水などにより構成された鉱化流体(鉱液)に含まれる金属成分が沈殿して形成されたものである。
[武内寿久祢・金田博彰]