手水構(ちょうずがまえ)の一形式で、縁先手水鉢ともいう。縁先の一隅に構える。普通は座敷の外あるいは縁の外に濡(ぬ)れ縁を付し、その前方に手水鉢を据え、周囲に役石(やくいし)を配して縁との間に海を形成し、排水のための吸込みをつくる。役石には蟄石(かがみいし)、覗(のぞき)石(清浄石)、水汲(みずくみ)石、水揚(みずあげ)石がある。水鉢の背後には植え込みや袖垣(そでがき)をつくり、近くに鉢明かりの灯籠(とうろう)を配置する。灯籠は軒に釣灯籠を下げることもある。縁の上から手水を使うため、水鉢は台石にのせるか、背の高いものを据える。書院で茶の湯を行うための設備であったが、建物と庭をつなぐ重要な役割を演じ、書院にはなくてはならない装置として普及し、濡れ縁を含めて鉢前の構成には趣向が凝らされている。
[中村昌生]
…手水鉢の役割は,茶事に臨むに際し,神仏に詣でるのと同様に心身を清浄にするところにあり,《南方録》に〈露地にて亭主の初の所作に水を運び,客も初の所作に水をつかふ,これ露地・草庵の大本也,此露地に問ひ問ハるゝ人,たがひに世塵のけがれをすゝぐ為の手水鉢也〉と説かれている。種々の趣向がこらされ,庭に生けこんで鉢を低く据えたつくばい(蹲踞)や,縁先手水鉢とも呼ばれる丈の高い鉢前(はちまえ)形式の手水鉢が工夫された。水をためておく水穴は,浅い半球形のものが多く,楕円形,角形のものもある。…
※「鉢前」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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