鉢前(読み)ハチマエ

デジタル大辞泉 「鉢前」の意味・読み・例文・類語

はち‐まえ〔‐まへ〕【鉢前】

座敷方丈客殿などの縁先に設けられる手水ちょうず設備台石の上に手水鉢を置き、手洗い用と茶会の手水用とがある。

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精選版 日本国語大辞典 「鉢前」の意味・読み・例文・類語

はち‐まえ‥まへ【鉢前】

  1. 〘 名詞 〙 書院の縁先の手水鉢(ちょうずばち)とその周囲の石で造形される構えをいう。また、茶庭では蹲踞(つくばい)の前の水の落ちるところをいう。
    1. [初出の実例]「鉢前はいときれいに掃除してありける故」(出典:随筆・槐記‐享保一三年(1728)二月二二日)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「鉢前」の意味・わかりやすい解説

鉢前
はちまえ

手水構(ちょうずがまえ)の一形式で、縁先手水鉢ともいう。縁先の一隅に構える。普通は座敷の外あるいは縁の外に濡(ぬ)れ縁を付し、その前方に手水鉢を据え、周囲に役石(やくいし)を配して縁との間に海を形成し、排水のための吸込みをつくる。役石には蟄石(かがみいし)、覗(のぞき)石(清浄石)、水汲(みずくみ)石、水揚(みずあげ)石がある。水鉢の背後には植え込みや袖垣(そでがき)をつくり、近くに鉢明かりの灯籠(とうろう)を配置する。灯籠は軒に釣灯籠を下げることもある。縁の上から手水を使うため、水鉢は台石にのせるか、背の高いものを据える。書院で茶の湯を行うための設備であったが、建物と庭をつなぐ重要な役割を演じ、書院にはなくてはならない装置として普及し、濡れ縁を含めて鉢前の構成には趣向が凝らされている。

中村昌生

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世界大百科事典(旧版)内の鉢前の言及

【手水鉢】より

…手水鉢の役割は,茶事に臨むに際し,神仏に詣でるのと同様に心身を清浄にするところにあり,《南方録》に〈露地にて亭主の初の所作に水を運び,客も初の所作に水をつかふ,これ露地・草庵の大本也,此露地に問ひ問ハるゝ人,たがひに世塵のけがれをすゝぐ為の手水鉢也〉と説かれている。種々の趣向がこらされ,庭に生けこんで鉢を低く据えたつくばい(蹲踞)や,縁先手水鉢とも呼ばれる丈の高い鉢前(はちまえ)形式の手水鉢が工夫された。水をためておく水穴は,浅い半球形のものが多く,楕円形,角形のものもある。…

※「鉢前」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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