銅板などでかまど形につくったもの。内部を空洞にしてあるので,そこへ水を満たし,上部に鍋,釜をかけて炊事すると,湯が沸くしくみになっている。江戸の町家の炊事施設として多く用いられた。かまど全体を銅壺にしたものを惣銅壺(そうどうこ)といったが,多くは土製のかまどと銅壺とが併用された。《守貞漫稿》が図を掲げて,〈上図ノ者ハ大釜ノ所土竈一口,其他銅壺二口アリ,此図ノ銅壺三ケヲ合テ二口ヲ備フ,此中銅壺ヲ分銅(ふんどう)ト云〉としているように,分銅形の中銅壺に左右の銅壺を密着させてたき口を2ヵ所設けるのがふつうだったらしい。銅壺には湯をくみ出す口とひしゃく立ての穴がつけてあった。明治以降,銅壺のかまどはしだいにすたれたが,長火鉢などに入れて使う小型の銅壺は第2次大戦前までは広く使われていた。なお,上記の銅壺より転じたものであろう,ブリキ製の箱や石油缶を〈どうこ〉と呼ぶことがある。
→竈(かまど)
執筆者:西村 潔
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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