長火鉢(読み)ナガヒバチ

デジタル大辞泉 「長火鉢」の意味・読み・例文・類語

なが‐ひばち【長火鉢】

居間茶の間などにおく、長方形箱火鉢引き出し銅壺どうこなどがついている。

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精選版 日本国語大辞典 「長火鉢」の意味・読み・例文・類語

なが‐ひばち【長火鉢】

  1. 〘 名詞 〙 長方形の箱火鉢。ひきだし、銅壺(どうこ)などがついていて、居間や茶の間に置くもの。
    1. [初出の実例]「後にとよ、はな振袖新造にて、長火鉢(ナガヒバチ)の側にあたって居る模様」(出典歌舞伎・廓曠着紅葉裲襠(子持高尾)(1873)序幕)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「長火鉢」の意味・わかりやすい解説

長火鉢
ながひばち

木炭(すみ)を燃料とする暖房用具の一種。長方形の箱火鉢で、右側に3、4段の引出しを設け、その上に猫板(ねこいた)(敷板(しきいた))を置く。灰を入れる落(おと)しには多く銅板を張り、これに銅壺(どうこ)、五徳(ごとく)を置く。落しの下には引出しをつけることもある。長火鉢は、普通ケヤキナラセンクワなどでつくる指物(さしもの)で、大きさは、長さ二尺(約60.6センチメートル)、幅一尺二寸(約36.4センチメートル)、高さ一尺一寸(約33.3センチメートル)くらいである。江戸時代の寛政(かんせい)年間(1789~1801)ごろから急速に普及し、ちょうど農山漁村の生活におけるいろりのように、長火鉢は、都市の家庭生活の中心として、昭和20年代まで、茶の間や居間になくてはならぬ存在であった。

[宮本瑞夫]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「長火鉢」の意味・わかりやすい解説

長火鉢
ながひばち

木炭を燃料とする暖房具の一種で,長方形の木製指物,箱火鉢のこと。この火鉢の普及は,木炭の利用が盛んになった近世にあり,特に江戸時代,寛政年間 (1789~1801) にもなると,地方の農・漁・山村の生活における「いろり」と同じような役割をもつものとして,都市家庭生活の茶の間に必要なものとなってきた。その構造は,普通長さ2尺 (約 60cm) ,幅1尺2寸 (約 36cm) ,高さ1尺1寸 (約 33cm) で,右側には3~4段の引出しがつけられ,その上に猫板が置かれていた。また,左側の灰を入れる落しには,銅板が多く用いられ,そこに銅壺や五徳を置いて火をいけた。箱の材料としては,ケヤキやナラなどが主として利用された。

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事典 日本の地域ブランド・名産品 「長火鉢」の解説

長火鉢[漆工]
ながひばち

四国地方香川県地域ブランド
高松市で製作されている。かつては居間には欠かせない室内調度品の一つであった。胴には固くて丈夫な欅を用い、光沢を出すために漆が塗られる。小物用の引き出しには、鉄金具を取り付けられる。香川県伝統的工芸品。

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世界大百科事典(旧版)内の長火鉢の言及

【銅壺】より

…銅壺には湯をくみ出す口とひしゃく立ての穴がつけてあった。明治以降,銅壺のかまどはしだいにすたれたが,長火鉢などに入れて使う小型の銅壺は第2次大戦前までは広く使われていた。なお,上記の銅壺より転じたものであろう,ブリキ製の箱や石油缶を〈どうこ〉と呼ぶことがある。…

【火鉢】より

…指物の火鉢には御殿火鉢,格子形火鉢,箱火鉢などがあり,刳物の火鉢には桐火鉢や欅火鉢などがある。また木製火鉢の一種に長火鉢といって長方形の箱形につくり,上の縁の幅を広くし,下部に抽斗(ひきだし)などをつけ,灰入れの一方に銅壺を備えつけて湯をわかしたり燗(かん)をしたりできるようにしつらえ,簡単な調理や食事ができるように工夫されたものがある。金属製は銅鋳物や真鍮製が多く,獅子脚などをもつ。…

※「長火鉢」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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