容器の底の穴から流出,あるいは容器に流入する水の量によって時間を測る時計。日時計の次に出現したもので,機械時計が普及するまで夜間,曇雨天用に使われた。前1400年ころのエジプトの水時計が現存している。これは水がめ状の容器の底に小さな水の流出孔があって,容器内側には時刻目盛が刻まれ,夜間に内面を指でさわって水面の位置と目盛から時刻を知った。また古代サクソン人は底に小さい穴のあいた金属製の鉢を水に浮かべ,鉢が沈むまでの時間が一定なのを時計として利用した。水時計をもっともよく利用したのは古代ギリシア人で,クレプシュドラ(もとは〈水を盗む〉の意)と呼ばれ,演説や裁判の弁論の時間を,一定量の水をあてがうことにより制限した。アレクサンドリアで活躍したクテシビオスが作った水時計は,円筒に水が少しずつ流れこんでうきをおし上げ,うきについた人形が時刻目盛をさし示すもので,流れこむ水量を自動的に調節して一定に保つしくみや,不定時法により月ごとに変わる時刻目盛を次々に円筒に記入しておき,これを自動的に回転させる装置をそなえた精巧なものだった。その後水時計はローマ,アラビア,中世ヨーロッパで改良が加えられ,非常に大型のものや文字盤と時針をそなえたものも作られた。機械時計が作られるようになっても,なおしばらくの間利用されていた。なお中国の漏刻も水時計の一種である。
→時計
執筆者:小野 茂+市場 泰男
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水のしたたりや流出・流入を利用して時間を測る時計。日時計や星時計は時刻を示すもので太陽や恒星が見えない場所では使用できず、また任意時点からの測定、時間の細分には適していない。古代文明の発祥地エジプトや中国などではこれを補うため古くから水時計が用いられた。現存最古のものは紀元前1400年ごろのエジプトの水時計で、バケツ状の容器の底に小穴があり、満たした水の水位変化によって時間を測る。ギリシア人はこれをクレプシドラclepsydra(水泥棒の意)とよんだ。前2世紀、水時計はアレクサンドリアのクテシビオスとその弟子ヘロンなどによって著しい発達を遂げた。クテシビオスの時計は月、日、時刻ばかりか黄道十二宮を示すものである。水時計は17世紀ごろまでも広く用いられ、なかには時打ち装置を備えたものもある。671年(天智天皇10)に初めて時を報じたとされる日本の漏刻(ろうこく)も水時計の一種である。
[元持邦之]
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…また原子時計の発達によって時間の精密測定が可能となり,それによって定められた時間が原子時である。
[日時計から水時計へ]
人間が時間の観念を得たのは天空上における太陽の動きであるから,その太陽の位置を知る日時計が最初に考案された時計であったと考えられる。初めは1本の棒を立て太陽による影で時刻を知るノーモンgnomonが使用された。…
…オベリスクの高い尖塔も日影棒として用いられたという説もある。夜の時間をはかるのには水時計が用いられた。前1400年ころエジプトで作られた水時計が現存している。…
…中国で用いられた水時計のこと。漏は計時用の漏壺を指し,刻は時間の単位(1日は100刻が標準であるが,120刻,96刻,108刻とした時期があった)を意味する。…
※「水時計」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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