銅脈(読み)どうみゃく

精選版 日本国語大辞典 「銅脈」の意味・読み・例文・類語

どう‐みゃく【銅脈】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. 銅の鉱脈
      1. [初出の実例]「路(みち)はたに銅脈(ドウミャク)さへ見附かれば」(出典坑夫(1908)〈夏目漱石〉)
    2. 銅製のにせがね。偽造貨幣のこと。
      1. [初出の実例]「是はしゃんと掏替へて銅脈包に与五郎の印判押させ」(出典:浄瑠璃・双蝶蝶曲輪日記(1749)一)
      2. 「この百両は一両もいけぬ、皆銅脈(ドウミャク)ぢゃ」(出典:歌舞伎・隅田川続俤(法界坊)(1784)口明)
    3. にせもの。また、粗悪なもの。
      1. [初出の実例]「あれは内の娘御じゃ、どれぞ外のになさんせといへば、ぜひなくどうみゃくをつかむ事あり」(出典:洒落本・浪花色八卦(1757)花菱卦)
  2. [ 2 ]どうみゃくせんせい(銅脈先生)」の略。

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改訂新版 世界大百科事典 「銅脈」の意味・わかりやすい解説

銅脈 (どうみゃく)
生没年:1752-1801(宝暦2-享和1)

江戸後期の狂詩作者。京都の人。本名は畠中正盈。字は子充,号は観斎,通称は頼母(たのも)。狂詩作者として銅脈先生,あるいは片屈道人(へんくつどうじん)と名乗る。本業は聖護院宮に仕える公家侍であった。1769年(明和6),最初の狂詩集《太平楽府(たいへいがふ)》を刊行する。2年前に江戸で大田南畝が《寝惚(ねぼけ)先生文集》を刊行しており,狂詩を滑稽文学の一分野として確立する名作が東西呼応して出現したことから,一躍有名になった。以後,《勢多唐巴詩(せたのからはし)》(1771),《太平遺響》(1778)など狂詩集の発表を続ける。作風は,狭斜の巷の哀歓の描写の中に,鋭い風刺や知識人らしい自嘲をにじませたもので,狂詩史上の第一人者と称される。自分と同様の貧窮の公家侍の退廃的な生活を滑稽な筆致で冷たく暴露した《風俗三石士》(没後の1844年刊)など,滑稽小説にも佳作が多い。
狂詩
執筆者:

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朝日日本歴史人物事典 「銅脈」の解説

銅脈

没年:享和1.6.2(1801.7.12)
生年:宝暦2(1752)
江戸中・後期の狂詩作者。畠中氏。名は正盈,字は子允,通称は政五郎,頼母,号は観斎,狂号は銅脈先生,太平館主人,片屈道人など。讃岐国(香川県)の都築新助の子として生まれ,京都の 聖護院宮家に仕える畠中正冬の養子となった。那波魯堂に儒を学んだが,明和6(1769)年に『太平楽府』を出版して以来,江戸の寐惚先生(大田南畝)と併称され,狂詩作者として知られた。狂詩集にはこのほか『勢多唐巴詩』『吹寄蒙求』,寐惚との競詠集『二大家風雅』などがあり,その作風は寐惚の滑稽に対し,銅脈の諷刺と評される。狂詩以外にその諷刺の才能は,『針の供養』『太平楽国字解』『風俗三石士』などのような滑稽本にも発揮されている。しかし,単なる諷刺,滑稽の人ではなく,晩年には柴野栗山と和学の古典を考究し,蒲生君平らと陵墓の調査研究に従事するという一面もあった。<参考文献>森銑三「銅脈先生」(『森銑三著作集』2巻),中村幸彦「諷刺家銅脈先生」(『中村幸彦著述集』6巻)

(揖斐高)

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百科事典マイペディア 「銅脈」の意味・わかりやすい解説

銅脈【どうみゃく】

江戸後期の狂詩作者。畠中(はたけなか)氏。名は正盈,通称は政五郎,頼母(たのも)。号は観斎。狂号は銅脈(にせがねの意)のほかに太平館主人,片屈(へんくつ)道人。讃岐の郷士都築新助の子に生まれ,京の聖護院宮の近習侍畠中正冬の養子となってその跡を継いだ。その作風は諷刺性に特徴があり,狂詩集《太平楽府(たいへいがふ)》《太平遺響》など,狂文《太平楽国字解》などがある。晩年は国書校訂や山陵調査にも従事した。

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世界大百科事典(旧版)内の銅脈の言及

【狂詩】より

…本書の好評に刺激されて,以後狂詩集が続々と刊行されるようになった。2年後の69年,京都の銅脈(どうみやく)が《太平楽府(たいへいがふ)》を出す。銅脈は才気においては南畝に及ばないが,知識人らしい自虐と批判精神によって滑稽の中におのずと人生の哀歓を盛りこみ,作品の文学性においては南畝をしのぐ。…

【太平楽府】より

…狂詩集。銅脈著。1769年(明和6)刊。…

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