太平楽府(読み)たいへいがふ

改訂新版 世界大百科事典 「太平楽府」の意味・わかりやすい解説

太平楽府 (たいへいがふ)

狂詩集。銅脈著。1769年(明和6)刊。大田南畝の《寝惚(ねぼけ)先生文集》(1767)と並んで,狂詩を滑稽文学の一分野として確立した画期的な作品。狭斜の巷(ちまた)を中心とした京都の庶民風俗の描写のなかに,詩情と風刺精神をただよわせている。とくに七言古詩〈婢女行(ひじよこう)〉は,京都に女中奉公に出てきた田舎娘が都会の水に慣れてしだいに転落してゆくさまを,滑稽かつ冷厳に描き出した力作である。
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太平楽府 (たいへいがふ)
Tài píng yuè fǔ

中国,元代の散曲選集。9巻。楊朝英(号は澹斎)編。正しくは《朝野新声太平楽府》。1351年(至正11)刊。無名氏を含む90人の小令970編と套数142編を収める。同じ編者による《陽春白雪》5巻(6巻本もある)とともに,〈〉の亜流におちず,あらたな文学用語である口語と,長編形体である〈套数〉の性能を生かして,散曲ジャンルの特徴を十分に発揮した作品の多くを収める。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「太平楽府」の意味・わかりやすい解説

太平楽府
たいへいがふ
Tai-ping yue-fu

中国,元代の散曲選集。正しくは『朝野新声太平楽府』。元の楊朝英の編。9巻。関漢卿をはじめ,八十余人の作を,宮調によって分類し,巻五までに小令 (短編) ,巻六以降に套数 (長編) を収める。同じく散曲の選集である『陽春白雪』とともに,元代の散曲研究の最も基本的な資料

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世界大百科事典(旧版)内の太平楽府の言及

【狂詩】より

…本書の好評に刺激されて,以後狂詩集が続々と刊行されるようになった。2年後の69年,京都の銅脈(どうみやく)が《太平楽府(たいへいがふ)》を出す。銅脈は才気においては南畝に及ばないが,知識人らしい自虐と批判精神によって滑稽の中におのずと人生の哀歓を盛りこみ,作品の文学性においては南畝をしのぐ。…

※「太平楽府」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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