銙帯(読み)かたい

精選版 日本国語大辞典 「銙帯」の意味・読み・例文・類語

か‐たい クヮ‥【銙帯】

〘名〙 腰帯(ようたい)であり、革帯(かくたい)一種黒漆ぬりの革の帯の表面に銙(か)と呼ぶ金、銀、銅または玉石、石などの飾りの座を配置したもの。銙の材質によって金帯銀帯玉帯石帯などともいう。

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改訂新版 世界大百科事典 「銙帯」の意味・わかりやすい解説

銙帯 (かたい)

金・銀・玉・石の装飾板(銙)や垂飾を革帯または布帯にとりつけ,尾錠で締める腰帯の総称。本来は中央アジアや北方胡族の間に行われた服飾具であった。六朝の頃に中国に伝わり,動物や植物文様を透し彫した銙板を装着したものが盛行する。隋・唐時代には官人,貴族の服制として整い,品級や位階によって玉・金・銀・銅・鉄の5種の銙が定められた。日本では古墳時代の4世紀末に,竜文・心葉文をあしらった金銅製銙帯があらわれる。奈良時代には唐制にならって方形(巡方(じゆんぽう))と半円形丸鞆(まるとも))の銙を組み合わせた革帯が官人の服制に採用され,五位以上は金・銀帯,六位以下は銅の銙に黒漆を塗った烏油帯(くろつくりのおび)が行われた。なお,六位以下の下級官人用の銅銙帯は銙の大・小で官位をあらわしたらしい。平安初期には石製銙(石帯(せきたい))に変わり,高級貴族は玉・瑪瑙(めのう)・水晶をはじめ,犀角・玳瑁(たいまい)などの銙を用い,次第に華美な装身具へと変わってゆく。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「銙帯」の意味・わかりやすい解説

銙帯
かたい

古代の貴族階級が、公服着用のときに用いた革帯。もとは腰帯(こしおび)といわれ、黒漆塗りの革帯の後腰部分に銙(か)とよぶ金、銀または玉、石などの正方形または円形の飾り12個を並べて据え付けたもの。養老衣服令では、五位以上金銀装、六位以下は烏油(くろぬり)といって、銅に黒漆を塗ったものをつけると定められている。平安時代以降は、玉や石のみを用いることとなって、石帯とか玉帯とよばれるようになった。銙帯は片端鉸具(かこ)をつけ、他の端に革先金をつけて、必要な箇所に穴をあけ、銙具の刺金(さすが)を通し、締めて留めるようになっている。

[高田倭男]

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世界大百科事典(旧版)内の銙帯の言及

【帯金具】より

…漢王朝は周辺の胡族の王および有力豪族に,馬蹄形の金銀打出し文様のある帯の一端のみに鉸具がつく腰帯を服属の証として賜与した。これが原形となり三国・西晋の高級軍人のシンボルとしての銙帯(かたい)が登場する。それは鉸具のあとへ数枚の銙板をならべ,末端に蛇尾をつけたもので,銙板には扁舌状の環がつき,各金具には竜・虎文様を透し彫にする。…

※「銙帯」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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