改訂新版 世界大百科事典 「錦旗革命」の意味・わかりやすい解説
錦旗革命 (きんきかくめい)
1930年代前半の日本ファシズム運動のスローガン。〈錦旗〉は赤地の布に日月を金銀でししゅうしたり,描いたりした旗のことで,南北朝時代ごろから朝敵征伐のときに天皇軍の標章として用いられたのにちなむ。明治維新になぞらえ,天皇をいただいた〈革命〉を唱えることにより,左翼勢力による〈赤化革命〉に対抗しようとした。とくに,大川周明と関係の深い全日本愛国者共同闘争協議会や,愛国勤労党,新日本国民同盟などの団体が,〈天皇政治確立〉のための直接行動の意をこめてこの言葉を用いている。こうしたスローガンが出されてくる背景には,昭和恐慌の深刻化のなかでの反独占・反財閥的気分の国民への広がり,財閥とつながる既成政党の腐敗の暴露,その統治能力の失墜,社会主義思想の影響力の広がりといった状況があった。なお十月事件を指して〈錦旗革命〉事件という場合もある。
執筆者:須崎 慎一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報