閉じたシステム・開いたシステム(読み)とじたしすてむひらいたしすてむ(英語表記)closed system, open system

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

閉じたシステム・開いたシステム
とじたしすてむひらいたしすてむ
closed system, open system

力学的なシステムのように、外部から力(インプット)が加えられない限り永遠に一定のシステム状態を変えることがなく、また力が加わっても、(1)元の状態(均衡)を回復するためにその力を吸収するか、(2)あるいは力が大きすぎて当該システムが崩壊してしまうような場合、このシステムは閉じたシステムであるという。逆に、システムを取り囲んでいる環境とつねになんらかのインプット―アウトプット交換過程を繰り返しており、そうした過程(適応とよぶ)において不断に均衡―不均衡、安定―不安定の状態を経過しながら、なおかつシステムとしてそれが常態であるような場合、これを開いたシステムという。

 一般に、生命体システムや社会システムはその環境と不断にかかわりながら自ら存在を維持してゆくわけであり、場合によっては環境に働きかけてこれを変更したり、また環境そのものの構造をシステムの構造に内面化することによって、より高度な適応を可能にしてゆくこともある。もっとも、開いたシステムといえども環境との間に明確な境界を維持していることは当然であり、システムと環境とのインプット―アウトプット交換関係は特定チャンネルを通して行われる。いうまでもなく、適応機能の上昇としての「成長」や「進化」や「構造洗練」という現象は開いたシステムにおいてのみ可能である。閉じたシステムは、基本的には、エントロピー増大の傾向に支配されているのであり、最終的にはエントロピー極大の状態となって均衡し、そこではもはや何の変化もおこりえないのである。

[中野秀一郎]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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