日本大百科全書(ニッポニカ) 「阿久根台風」の意味・わかりやすい解説
阿久根台風
あくねたいふう
1945年(昭和20)10月10日に鹿児島県阿久根市付近に上陸した台風。名称は上陸した地名に由来する。上陸後は九州北部を通って山陰に抜け、青森県西方の日本海で消滅した。九州や中国地方では暴風が吹き、台風接近前から降り出した前線による雨の影響で、九州から中部地方では大雨となった。1か月前の枕崎台風による大被害から立ち直っていない時期の、さらなる台風襲来であり、河川の氾濫(はんらん)や土砂災害、橋梁流出が相次ぎ、農作物に甚大な被害が発生した。被害域は西日本全域に及び、とくに鹿児島県と兵庫県で著しく、全国の死者・行方不明者451人(うち兵庫県では200人以上)。中型台風のわりに被害が大きかった原因の一つに、第二次世界大戦後まもない時期であったため、戦時の国土荒廃の影響があげられている。
[饒村 曜]