改訂新版 世界大百科事典 「限界代替率」の意味・わかりやすい解説
限界代替率 (げんかいだいたいりつ)
marginal rate of substitution
消費者の嗜好を表す指標の一つ。いま,ある消費者がある財の組合せを消費しているとしよう。このとき,ある財(X)の消費を1単位増加させるとこの消費者の満足(効用)は増加するから,別の財(Y)の消費を減らしても,当初の効用水準を保つことができる。当初の財の組合せと同じ効用を与える(当初の組合せと無差別にする)ようなYの消費の減少量を,XのYに対する限界代替率と呼ぶ。つまり,限界代替率(MRS)とは,X財の消費1単位と交換してもよいとその消費者が考えるY財の量であり,したがって,この消費者が現在の消費の組合せのもとで,Y財に比べてX財をどのくらい好んでいるかを表す指標である。
図に表したように,互いにこの消費者にとって無差別な消費の組合せの軌跡を無差別曲線と呼ぶが,ある消費の組合せ(図のA点)の限界代替率は,その点での無差別曲線の接線の勾配にマイナス1を乗じたものに等しい。X財の消費を増やしY財の消費を減らすことによって無差別曲線上を動いていけば,B点ではA点に比べて相対的に消費量の大きいX財より,消費量の小さいY財のほうが重要であると考えるようになるだろう。つまり,X財の消費量が相対的に増加すれば,XのYに対する限界代替率は低下すると考えられる。これを〈限界代替率逓減の法則〉と呼び,通常,消費者の嗜好はこの法則を満たしていると考えられる。この法則が満たされれば,無差別曲線は図のように,原点に向かって凸の右下がりの曲線として表される。
執筆者:奥野 正寛
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報