除雪作業を行う車両。本項目では、鉄道の車両について記述する。積雪の状況、線路の状態によってラッセル式除雪車、ロータリー式除雪車などが使い分けられている。
蒸気機関車の時代は、除雪車はそれ自体が独立した車両(貨車)で、機関車の前に連結し、後押しされて使用されていた。1961年(昭和36)ころからディーゼル機関車が普及し、機関車にラッセルやロータリー式の除雪装置(台車を装備した付属装置)を取り付けたものが出現し、主流を占めるようになった。また、保線用のモーターカーに除雪装置を取り付けた小型除雪車も出現し、駅の構内などの除雪に活躍している。
(1)ラッセル式除雪車 単線型は前頭部の大型のスノープロー(排雪板。スノープラウともいう)とそれに続く後翼によって雪を左右に跳ね飛ばす形式で、毎時30~40キロメートル以上の走行速度で除雪する。複線区間で使用するラッセル式除雪車は、前頭のスノープローに可動式の前翼を取り付け、雪を左側に跳ね飛ばすようになっている。機関車の両端にラッセル式除雪装置を取り付け、折り返し時に転車台で方向転換する手間を省いたラッセル式除雪車(両頭式ラッセル)が出現し、主流を占めている。除雪作業速度が比較的速いため、降雪時にまず先に使用される。しかし、ラッセルを繰り返し使用していると、除雪された雪が線路の両側で壁になり、ラッセル除雪ができなくなってしまう。そのような場合や積雪が非常に深くなった場合に使用されるのがロータリー式除雪車である。
(2)ロータリー式除雪車 前頭部のかき寄せ翼を広げて雪をかき込み、かき寄せ車で雪を羽根車室(ブロアケース)の中に送り込み、羽根車によって投雪筒で雪を左右に投雪する形式である。投雪筒を回転させ、前方から180度の広範囲で投雪方向と距離を選べるものもある。除雪作業を行う際の走行速度は毎時5~10キロメートルと遅く(積雪量によってはそれ以下)、線路を長時間封鎖してしまうので、ロータリー式除雪車投入時期の選定は非常にむずかしい。
[福田信毅]
雪搔(ゆきかき)車ともいう。線路の除雪作業を行う鉄道車両。車体の前端部にくさび形をした除雪板(スノープラウ)を装備し,これで雪を線路の左右にはね飛ばすラッセル車Russel snow-plow(Russelは発明者の名),回転羽根(ローター)で雪を遠方に投げ飛ばすロータリー車(回転雪搔車)rotary snow-plow,線路際の雪の壁を切り崩してロータリー車に雪を供給するマックレー車Mackley's snow-plow(Mackleyは考案者の名)などがある。日本の国鉄(現JR)では,1911年にアメリカから輸入したラッセル車を北海道で使用したのが最初で,23年にはロータリー車が同じくアメリカから導入された。蒸気機関車の時代は除雪車は貨車の一種として,機関車に後押しあるいは牽引されて使用されていたが,ディーゼル機関車が普及したこと,また1961,63年の新潟地方の大雪の際の除雪作業の経験などから,現在ではディーゼル機関車にラッセルやロータリーの付属装置を取り付けた自走可能な除雪車が主流を占めるようになった。そのほか,保線用のモーターカーに除雪装置を取り付けた形式の小型除雪車も登場し,小回りがきくため駅の構内などの除雪に活躍している。ラッセル車は除雪作業速度が比較的速いので,降雪時にはこれが先に使用される。しかしラッセル除雪を繰り返していると,線路の両側に除雪された雪の壁ができてそれ以上の除雪が不可能となるので,その雪壁を切り崩すためにロータリー車が使用される。ただしロータリー車は作業速度が遅い(2~10km/h)ので,その投入時期の選定が非常にむずかしい。
執筆者:福田 信毅
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