鉄道車両(読み)てつどうしゃりょう

改訂新版 世界大百科事典 「鉄道車両」の意味・わかりやすい解説

鉄道車両 (てつどうしゃりょう)

鉄道において人間および貨物輸送に用いられる車両の総称。みずから原動機をもって動く動力車と,動力をもたない客貨車に大別され,動力車はさらに動力源により,蒸気車,内燃車,電気車などに分けられる。また,動力車は客貨車を引っ張るだけで,この上に旅客や貨物を積むことのない機関車(蒸気機関車,ディーゼル機関車,電気機関車など)と,自分で動けるうえに旅客,貨物を積載することのできる蒸気動車,内燃動車,電車などに分けられる。道路用車両などと比べて鉄道車両の構造上の特徴は,車輪フランジをもっていることと車輪の踏面円錐面の一部をなしていることである。前者は車輪がレールから外れることを防ぎ後者輪軸がレールの上を転送しながら左右いずれかに偏ったとき,中央に戻る力を与えることにより,車両が脱線することなく安定して走行することを可能にする。また,鉄道車両は一般に他の車両とつながるための連結器をもち,多数の車両が連結されて列車として輸送を行うことも一つの特色である。

 鉄道車両の重量は,日本国有鉄道(現JR)においては客貨車の軸重(1軸当りの重量)は13t以下,機関車で16t以下,新幹線電車では16t以下(東海道山陽),または17t以下(東北,上越)を標準としているが,ヨーロッパでは最大20~25t,アメリカでは30t以上のところもある。

鉄道車両を運転する場合,車両の各部が線路上,あるいは線路に沿って設けられた建造物に触れては困るので,建造物の位置と車両の大きさは一定の限界が互いに関連をもって定められている。前者を建築限界,後者を車両限界という。JRの規程では,車両は直線軌道上正位において,この車両限界外に出ることを許されない。建築限界は車両限界との間に一定の離隔をもって決められ,その寸法は鉄道の種類によって異なる。

鉄道車両を安全に運転し,所定の位置に停止させるためにブレーキ装置は重要であり,法規上も種々の規定が設けられている。ブレーキ装置は,機械式ブレーキと電気式ブレーキに大別され,前者には,制輪子を車輪踏面に押しつける制輪子ブレーキ,制輪子を車輪とは別の回転体に押しつけるディスクブレーキ,制輪子をレールに押しつけるレールブレーキなどの種類があり,後者の電気式ブレーキには,車両の運動エネルギーを利用して主電動機を発電機として使用し,得た電気エネルギーを抵抗器によって熱として消費する発電ブレーキ,同様にして得た電気エネルギーを電車線を通して返還する電力回生ブレーキなどの種類がある。機械ブレーキは,その動力の種類によって,手ブレーキ,真空ブレーキ,圧力空気ブレーキ,油圧ブレーキなどに分類される。連結器はねじ連結器,自動連結器などに大別されるが,現在日本には機関車および貨車を主体に使用されている自動連結器,電車および新幹線に使用されている密着連結器,特急寝台車およびディーゼルカーなどに使用されている密着式自動連結器などがある。自動連結器は,連結すべき車両どうしを突き当てると,ナックル(連結器の頭部)が自然に組み合い,自動的に錠が落ちて連結が完了する。密着連結器は,自動連結器が両車両の上下左右の食い違いをその連結面間の〈ガタ〉で吸収するのに対し,連結面間は〈ガタ〉をなくし,自在継手を連結器と枠の間に設けたもので,強度条件の緩い電車などに用いられる。密着式自動連結器は,自動連結器の〈ガタ〉をなくして,かつ自動連結器とも連結可能としたものである。
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