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陰膳 かげぜん

7件 の用語解説(陰膳の意味・用語解説を検索)

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

陰膳
かげぜん

長期の旅行や異境にある家族の者が飢えないようにと祈って供える食膳。家族の無事を願う習俗の一つで,全国各地にみられる。家族と同じ物,本人の好物,珍しい物を供える。その飯や汁の器のふたに露がついていれば,本人が無事だと喜んだり,ないと不吉の相として悲しむ俗信がある。地方によって膳を供える期間や回数はまちまちである。鹿児島県奄美群島では,陰膳の台に写真を飾りその前に茶を供え,さらに小刀を無事を祈る印として置く。

出典|ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
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デジタル大辞泉の解説

かげ‐ぜん【陰膳】

旅行などで不在の人のために、家族が無事を祈って供える食膳。「毎日陰膳を据える」

出典|小学館
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百科事典マイペディアの解説

陰膳【かげぜん】

旅などに出た家人の無事を祈って,留守のものが仮に供える食膳。長旅,出漁,出稼ぎ,出征などに行われ,椀(わん)のふたに露がつくと無事,つかねば凶としたりする。不在者も家族と同じものを分けて食べることにより一種の同席意識が生じるとみられる。

出典|株式会社日立ソリューションズ・クリエイト
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栄養・生化学辞典の解説

陰膳

 疫学や栄養調査の用語.本来は旅人や出征兵士などの食事を,本人がいないにもかかわらずあえて一人前ととのえて無事を祈る習俗だが,栄養調査においては,ある家庭の食事調査にあたり,一人前を別に用意してもらって分析する方法.

出典|朝倉書店
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世界大百科事典 第2版の解説

かげぜん【陰膳】

旅などで家を離れている人の旅先での無事を祈って供える食膳。参詣や巡礼などの長旅の時に供えたが,商用,出稼ぎや兵士としての出征などの場合にも供える。何日も帰らない漁へ出る場合にも出すが,遭難して遺体が上がらなかったため,何年も陰膳を出し続けたという悲話もある。供え物は毎日家族が食べるものと同じものを,床の間とか,その人が食事の時いつもすわっていた場所に出し,皆が食べ終わると下げて主婦や子どもが食べる。

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大辞林 第三版の解説

かげぜん【陰膳】

戦争や旅などに出掛けた人の安全を祈って、留守宅の人が供える食膳。 「 -を据える」

出典|三省堂
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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

陰膳
かげぜん

旅などで不在の家人のために、道中の飢えがないようにと、無事を祈って留守宅で供える膳。回国や神詣(かみもう)でなどによる長旅、出稼ぎの留守宅で行われるが、戦時中の出征者や近年の修学旅行者に対しても行われた。陰膳を供えることはしだいにみられなくなっているが、遭難して生死が不明である場合には、現在でも行われている。神棚や床の間あるいは当人の常の座に、家人と同じ膳か好物を供える。食事のたびであったり、正月三が日や祭りなどのハレの日だけであったりする。飯や汁のつゆが椀(わん)の蓋(ふた)についていると、無事であるしるしとして喜んだりする。下げた膳についても、主人や子供が食したり、家族一同でこれにあたったり、いろいろである。家人の膳とはまったく異なる、神饌(しんせん)用とでもいうべき昆布(こんぶ)入りのおかずとなますを添えたり、神棚とかそれに類する特定の場所に供える事例から、陰膳が旅の無事を願う信仰に端を発していると考えられがちだが、俗信の領域のものである。[佐々木勝]

出典|小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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世界大百科事典内の陰膳の言及

【影】より

…近世になってから《一夜船》《奥州波奈志》《曾呂利話》などの民間説話集に記載されている幾つかの〈影の病〉は,当時でも,離魂病の別称で呼ばれる奇疾とされたが,奇病扱いしたのは,それはおそらく近世社会全体が合理的思惟に目覚めたというだけのことで,古代・中世をとおして〈離魂説話〉や〈分身説話〉はごくふつうにおこなわれていた(ただし,こちらのほうには唐代伝奇小説からの影響因子が濃厚にうかがわれるが)のであり,現在でさえ,〈影膳〉の遺風のなかにその痕跡が残存されている。 ついでに,〈影膳〉について補足すると,旅行,就役,従軍などにより不在となっている家人のために,留守の人たちが一家だんらんして食事するさい,その不在の人のぶんの膳部をととのえる習俗をいい,日本民俗学では〈陰膳〉と表記する。民俗学の解釈では,不在家族も同じものを食べることにより連帯意識を持続しようという念願が込められている点を重視しており,それも誤っていないと思われるが,〈かげ〉のもともとの用法ということになれば,やはり霊魂,遊離魂のほうを重視すべきであろう。…

【食事】より

…家族という集団は,特定の男女間の持続的な性関係の維持と,その間に生まれた子どもの養育をめぐってなされる食料の獲得と分配に関する経済単位として成立したものと考えられている。そこで,食事を共にすることが家族の連帯を象徴する手段となり,日本では家族のなかの不在者で,食事を共にできない者には,陰膳を供えることや,仏壇や神棚に食物を形式的に供えることによって,神仏となった祖先と象徴的に共食する習慣も近ごろまでおこなわれていた。 共食が家族の連帯の象徴となるように,さまざまな集団においての連帯感を強化する手段として共同飲食がなされ,共同労働や祭りなどの行事にさいして,一時的に形成された集団において食事を共にすることは世界各地でおこなわれる。…

※「陰膳」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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