塩素酸カリウム(読み)えんそさんかりうむ(英語表記)potassium chlorate

日本大百科全書(ニッポニカ) 「塩素酸カリウム」の意味・わかりやすい解説

塩素酸カリウム
えんそさんかりうむ
potassium chlorate

塩素酸のカリウム塩。石灰乳(水酸化カルシウム)に塩素を反応させて塩素酸カルシウムをつくり、これを塩化カリウムで複分解して製造する。

塩化カリウムの熱濃厚水溶液を電解する方法も行われる。無色の板状結晶。常温では安定であるが、400℃以上で分解して酸素を発生する。

この反応は、二酸化マンガンが存在すれば約200℃、酸化鉄(Ⅲ)の存在で190℃でおこる。このため実験室での酸素の発生法としてよく用いられるが、有機物、硫黄(いおう)、炭素などが混入すると爆発するので危険であり、この方法の適用はなるべく避けたほうがよい。強い酸化剤であるから、有機物、リン、硫黄、チオシアン酸塩、アンモニウム塩などと混ぜると衝撃や摩擦によっても爆発する。金属粉が存在するともっとも激しい。吸湿性はないが水に溶け、アルコールにもいくぶん溶ける。中性およびアルカリ性溶液中では酸化作用を示さないが、酸性溶液では酸化剤として働く。マッチ花火など爆薬の原料、漂白剤、医薬品の製造に用いられる。また防腐剤となり、染料の原料となる。医薬(うがい薬、収斂(しゅうれん)剤)としても用途がある。長期間保存したものや、日光にさらされたものは亜塩素酸カリウムを含み、可燃性物質と接触しただけで爆発することがある。濃硫酸濃硝酸に触れても爆発しやすい。劇薬。密閉容器内に遮光保存する必要がある。

[鳥居泰男]


塩素酸カリウム(データノート)
えんそさんかりうむでーたのーと

塩素酸カリウム
  KClO3
 式量  122.5
 融点  356℃
 沸点  (分解)
 比重  2.326(測定温度39℃)
 結晶系 単斜
 溶解度 7.2g/100g(水20℃)

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「塩素酸カリウム」の意味・わかりやすい解説

塩素酸カリウム
えんそさんカリウム
potassium chlorate

化学式 KClO3 。無色,光沢のある単斜晶系の板状晶で比重 2.34。冷水 1mlに 1g溶ける。融点 368℃で,この温度以上では分解して過塩素酸カリウムと酸素になる。強い酸化剤で,有機物,硫黄,リン,亜硫酸塩,次亜リン酸塩など酸化されやすい物質と混ぜ合せたものは,加熱または衝撃で爆発する。硫酸を加えても爆発し危険である。爆薬,マッチ,花火などのほか,染料,無機薬品,医薬品の製造や実験室における酸素の製造に使われる。

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