野鳥のキジの形につくり、車をつけた木製の郷土玩具(がんぐ)。九州地方にみられ子供がこれに紐(ひも)をつけて遊ぶ。産地は福岡、熊本、大分県を主に、佐賀、鹿児島にまでわずかながら分布。かつては約30か所の製作地があったが、すでに廃絶したものが多い。現在10か所たらずの地で製作、商品化されている。
発生の起因については、木地屋もしくは平家落武者集落などの、山奥暮らしの生活と信仰からという説、神話伝説にキジが瑞鳥(ずいちょう)として登場するのにちなんだという説、帰化人などによる海外文化の渡来説、雉馬の呼称もあって、絵馬のような神前奉納の信仰説などがある。古くから土地の子供たちに親しまれてきた九州地方独特の玩具で、東北地方のこけしと対比される。江戸末期、全国の珍奇な品を収録した図誌『耽奇漫録(たんきまんろく)』にも雉車の彩色図がある。
現在は産出地域、形態などにより、清水(きよみず)系、人吉(ひとよし)系、北山田系の3系統に分類される。清水系は、福岡県みやま市の清水観音の門前で売られるものが中心。紅、緑で彩色、背に鞍(くら)ようのものがあり、4個の車がついている。人吉系は、熊本県人吉市をはじめ球磨(くま)川流域の温泉、八代(やつしろ)市日奈久(ひなぐ)温泉で土産(みやげ)物につくられている。車は2個、赤、青色などを主調に強烈な色彩のものが多い。北山田系は、大分県玖珠(くす)町戸畑、山浦を中心とする県内各地でつくられる。車は2個、白木地を使い、彩色しないのが特徴である。
[斎藤良輔]
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