雨水利用(読み)あまみずりよう(その他表記)rainwater harvesting system

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「雨水利用」の意味・わかりやすい解説

雨水利用
あまみずりよう
rainwater harvesting system

人間が利用するために雨水取水・貯留すること。その技術には単純な天水桶から,ポンプタンク,浄化装置付きの複雑な構造のものまで,さまざまな種類がある。集めた水は庭の散水やトイレの洗浄洗車洗濯などに利用でき,浄化して飲料水にすることもできる。多くの人口過密地域で水不足が差し迫った問題になるなか(→水危機),雨水利用によって乾季の間も家庭や企業に水を供給し,都市水道水の需要を軽減することができる。雨は安定的には降らず,人間が容易に利用できるのは世界の降水量のごく一部にすぎないことを考えると,雨水利用はこの貴重な水資源を回収する有効な手段となりうる。都市では,建物や屋根,道路そのほかの舗装された地面に降る雨の多くが土には吸収されず,直接排水管に流れ込む。こうした不浸透性の地面が多くの地域で都市型水害を引き起こし,飲料水として利用できない汚染水を生み出す。降水量の少ない時期には地下水が枯渇し,需要を満たすに十分な量の飲料水を供給することが困難になる地域も少なくない。雨水を庭の散水や洗濯などの雑用水として利用すれば,淡水の総需要量を大幅に減らすとともに雨水インフラストラクチャーにかかる負担も軽減できる。大都市ではこうした淡水の需要と供給を削減することが重要である。多くの地域では天水桶などを使った雨水利用を奨励し,助成さえしているが,なかにはアメリカ合衆国南西部などのように雨水利用を水利権問題とみなし,雨水の収集を規制する地域もある。
最も単純な雨水利用は,雨樋とタンクをパイプでつないだ天水桶などの非加圧方式で,「乾式」と呼ばれる。雨がやめばパイプ内に水が残らないのでカ(蚊)などの昆虫温床にはならない。一方,パイプを直接タンクにつなげられない場合には「湿式」と呼ばれる方式が必要となる。タンクが集水面から離れたところにある場合や,複数のタンクがいくつかの建物に給水している場合には,雨樋と接続されたパイプが地中に埋設され,立ち管で地上のタンクにつなげられる。この方式では,長く敷かれたパイプに水が滞留しないよう加圧されることが多い。日本でも各地で雨水利用が進んでおり,2014年には,水資源の有効利用と,雨水が下水道河川へ集中的に流れるのを抑制することを目的に「雨水の利用の推進に関する法律」が施行された。

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